令和6年度税制改正の大綱

与党である自由民主党と公明党が「令和6年度税制改正大綱」を2023年12月14日に取りまとめ、それを踏まえて「令和6年度税制改正の大綱」が2023年12月22日に閣議決定されました。

今回の税制改正では、賃金上昇が物価高に追いついていない国民の負担を緩和し、物価上昇を十分に超える持続的な賃上げが行われる経済の実現を目指す観点から、所得税・個人住民税の定額減税の実施や、賃上げ促進税制の強化等を行うこととしています。また、半導体等の生産・販売に係る税額控除の戦略分野国内生産促進税制の創設や外形標準課税の適用対象法人の見直し等を行うこととしています。さらに、扶養控除等の見直しなどの税制措置を決定しています。

主な改正の概要は、次の通りです。

【個人所得課税】

(1) 所得税・個人住民税の定額減税

2024年分の所得税・2024年度分の個人住民税について、納税者及び配偶者を含めた扶養親族1人につき、所得税3万円・個人住民税1万円を控除します。ただし、納税者の合計所得金額が 1,805 万円以下である場合に限ります。

(2) ストックオプションの利便性向上

スタートアップが付与したストックオプションの場合に、年間の権利行使価額の限度額を最大で 3,600 万円に引き上げます。

【法人課税】

(1) 賃上げ促進税制の強化
  1. 従来の大企業向けの措置について、税額控除率の上乗せ措置(賃上げ4%以上に対して5%、5%以上に対して 10%、7%以上に対して 15%、プラチナくるみんやプラチナえるぼしの認定を受けている場合に5%等)等の見直しを行った上、その適用期限を3年延長します。
  2. 従来の大企業のうち従業員数が 2,000 人以下の法人について、3%以上の賃上げを行ったときは、その10%の税額控除ができる中堅企業向けの措置を加えます。この場合において、4%以上の賃上げを行ったときは 15%、教育訓練費の増加割合が 10%以上等であるときは5%、プラチナくるみんやえるぼし(3段階目)以上の認定を受けているときは5%を税額控除率に加算します。
  3. 中小企業向けの措置について、教育訓練費に係る税額控除率の上乗せ措置について、教育訓練費の増加割合が5%以上等である場合に適用できることとし、くるみんやえるぼし(2段階目)以上の認定を受けた場合に税額控除率に5%を加算する措置を加え、5年間の繰越控除制度を設けた上、その適用期限を3年延長します。
  4. 法人事業税付加価値割における雇用者給与等支給額の対前年度増加額を付加価値額から控除する措置について、法人税の賃上げ促進税制の見直しに合わせ、適用要件等の見直しを行った上、その適用期限を3年延長します。

    (注)上記1,2,3の「くるみん」・「えるぼし」等については、次の各ウェブページを参照ください。
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/index.html
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html
(2) 交際費から除外される飲食費に係る見直し

交際費等の損金不算入制度について、次の措置を講じた上、その適用期限を3年延長します。

  1. 損金不算入となる交際費等の範囲から除外される一定の飲食費に係る金額基準を1人当たり1万円以下(現行:5,000 円以下)に引き上げます。
  2. 接待飲食費に係る損金算入の特例及び中小法人に係る損金算入の特例の適用期限を3年延長します。

    (注)上記1の改正は、2024年4月1日以後に支出する飲食費について適用されます。
(3) 外形標準課税の適用対象法人の見直し
  1. 外形標準課税の対象法人について、現行基準(資本金1億円超)を維持した上で、当分の間、前事業年度に外形標準課税の対象であった法人であって、当該事業年度に資本金1億円以下で、資本金と資本剰余金の合計額が 10 億円を超える場合には、外形標準課税の対象とします。
    なお、施行日以後最初に開始する事業年度については、上記にかかわらず、公布日を含む事業年度の前事業年度(公布日の前日に資本金が1億円以下となっていた場合には、公布日以後最初に終了する事業年度)に外形標準課税の対象であった法人であって、当該施行日以後最初に開始する事業年度に資本金1億円以下で、資本金と資本剰余金の合計額が 10 億円を超える場合には、外形標準課税の対象とします。
    (注)上記の改正は、2025年4月1日に施行し、同日以後に開始する事業年度から適用されます。
  2. 資本金と資本剰余金の合計額が 50 億円を超える法人等の 100%子法人等のうち、資本金が1億円以下で、資本金と資本剰余金の合計額が2億円を超えるものは、外形標準課税の対象とします。
(4) 第三者保有の暗号資産の期末時価評価課税からの除外

譲渡についての制限その他の条件が付されている暗号資産の期末における評価額は、原価法または時価法のうちその法人が選定した評価方法により計算した金額とするほか、所要の措置を講じます。

【国際課税】

(1) グローバル・ミニマム課税への対応

令和5年度税制改正で法制化した所得合算ルール(IIR:Income Inclusion Rule)について、経済協力開発機構(OECD)によるガイダンスや国際的な議論の内容を踏まえた制度の明確化等の観点からの見直しを行います。

【納税環境整備】

(1) GビズIDとの連携による e-Tax の利便性の向上

法人が、GビズID(一定の認証レベルを有するものに限る。)を用いて e-Taxにより申請等を行う場合には、その申請等を行う際の電子署名等を要しないこととします。

(2) 更正の請求に係る隠蔽・仮装行為に対する重加算税制度の整備

隠蔽・仮装された事実に基づき更正請求書を提出していた場合を重加算税の適用対象に加えます。

(3) 不正申告を行った株式会社の役員等に対する徴収手続の整備

偽りその他不正の行為により国税を免れた株式会社の役員等(株式会社の発行済株式の 50%超を有し、偽りその他不正の行為をした者等に限る。)は、株式会社等から徴収不足となるときに限り、株式会社等から移転した一定の財産の価額を限度として、その国税の第二次納税義務を負うこととします。

【扶養控除等の見直し】

児童手当については、2024年10月から所得制限が撤廃されるとともに、支給期間について高校生年代まで延長されます。これを踏まえ、16 歳から 18 歳までの扶養控除について、15 歳以下の取扱いとのバランスを踏まえつつ、高校生年代は子育て世帯において教育費等の支出がかさむ時期であることに鑑み、現行の一般部分(国税 38 万円、地方税 33 万円)に代えて、かつて高校実質無償化に伴い廃止された特定扶養親族に対する控除の上乗せ部分(国税 25万円、地方税 12 万円)を復元し、高校生年代に支給される児童手当と合わせ、全ての子育て世帯に対する実質的な支援を拡充しつつ、所得階層間の支援の平準化を図ることを目指します。
扶養控除の見直しについては、2025年度税制改正において、2024年 10 月からの児童手当の支給期間の延長が満年度化した後の2026年分以降の所得税と2027年度分以降の個人住民税の適用について結論が出ます。
ひとり親控除について、とりわけ困難な境遇に置かれているひとり親の自立支援を進める観点から、対象となるひとり親の所得要件について、現行の合計所得金額 500万円以下を 1,000 万円以下に引き上げます。また、ひとり親の子育てにかかる負担の状況を踏まえ、ひとり親控除の所得税の控除額について、現行の 35 万円を 38 万円に引き上げます。合わせて、個人住民税の控除額について、現行の 30 万円を 33 万円に引き上げます。こうした見直しは、2026年分以降の所得税と2027年度分以降の個人住民税の適用について扶養控除の見直しと合わせて結論が出ます。

詳細な内容は、以下のウェブサイトを参照ください。
自由民主党ウェブページ
https://www.jimin.jp/news/policy/207233.html
財務省ウェブページ
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/index.html

以上

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