企業会計基準第33号「中間財務諸表に関する会計基準」等の公表について

1. 公表の背景

2022年12月に公表された金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告において、四半期開示の見直しとして以下の点が示されました。(*1)

  1. 上場企業について金融商品取引法上の四半期開示義務(第1・第3四半期)を廃止し、取引所規則に基づく四半期決算短信に「一本化」すること
  2. 開示義務が残る第2四半期報告書を半期報告書として提出すること

これに沿って金融商品取引法が改正され、今般、2024年3月18日開催の第522回企業会計基準委員会の承認の下、以下の企業会計基準及び企業会計適用指針(以下合わせて「本会計基準等」という)が公表されました。

  • 企業会計基準第33号「中間財務諸表に関する会計基準」
  • 企業会計基準適用指針第32号「中間財務諸表に関する会計基準の適用指針」

2. 本会計基準等の概要

  1. 本会計基準等の適用範囲

    【改正前】
     
    【改正後】
     
    なお、(※1)特定事業会社(銀行法、保険業法及び信用金庫法の特定の条項で定める業務に係る事業を行う会社)、及び(※2)改正後の金融商品取引法第 24 条の 5 第 1 項ただし書きを適用しない非上場会社が作成する第二種中間財務諸表については、本会計基準等ではなく従来通り中間作成基準等が適用されます。以下「中間財務諸表」の記載は、本会計基準等が適用される第一種中間財務諸表を指します。

  2. 会計処理等に関する基本的な方針
    上場企業等の半期報告書については、従前の第2四半期報告書と同程度の記載内容について、同様の期間内(45日)での提出が求められます。そのため中間財務諸表の作成にあたり必要となる会計処理及び開示については、基本的に、従前の四半期会計基準等の定めがそのまま引き継がれています。

  3. 会計処理等に関して個別に取扱いまたは経過措置が定められた項目
    中間会計期間(期首から6か月間を1つの会計期間)とした場合と、四半期会計基準等に従い第1四半期決算を前提に第2四半期の会計処理を行った場合とで差異が生じる可能性がある項目(以下、①~⑥)については、企業の実務負担が生じないよう、従来の四半期の実務が継続して適用可能となる個別の取扱いまたは経過措置を定めています。
    なお経過措置については、今後、本会計基準等と四半期会計基準等を統合した(仮称)期中財務諸表に関する会計基準等の開発において、変更が検討されることが考えられます。(*4)

    ア. 従来の四半期の実務が継続して適用可能となる取扱い
      ① 原価差異の繰延処理(本会計基準第17項)
      ② 子会社を取得又は売却した場合等のみなし取得日又はみなし売却日(本会計基準第20項)

    イ. 従来の四半期の実務が継続して適用可能となる経過措置
      ③ 有価証券の減損処理に係る中間切放し法(本適用指針第4項、62項)
      ④ 棚卸資産の簿価切下げに係る切放し法(本適用指針第7項、63項)
      ⑤ 一般債権の貸倒見積高の算定における簡便的な会計処理(本適用指針第3項、61項)
      ⑥ 未実現損益の消去における簡便的な会計処理(本適用指針第28項、64項)

  4. 適用時期
    本会計基準等は、改正後の金融商品取引法の規定(第24条の5第1項)による半期報告書の提出が求められる最初の中間会計期間から適用されます。

    そのため本会計基準等が最初に適用されるのは、改正前の金融商品取引法に基づき 2024年4月1日以後に第1四半期に係る四半期報告書の提出が求められる12月決算会社になると考えられます。この場合には、第1四半期(2024年1月1日から 2024年3月31日)に係る四半期報告書に含まれる四半期財務諸表については四半期会計基準等が適用され、中間会計期間(2024年1月1日から2024年6月30日)に係る半期報告書に含まれる中間財務諸表については本会計基準等が適用されることになると考えられます。

    本会計基準の適用初年度においては、遡及適用によってもたらされる過去の期間に関する情報に有用性があると考えられ、企業が自主的に前年度の四半期において適用していた会計方針と異なる会計方針を採用しない限り前年度の第2四半期財務諸表と同様の会計処理により適用初年度においても開示対象期間の中間財務諸表を作成することが可能となると考えられることから、開示対象期間の中間財務諸表等について本会計基準が遡及適用されます(本会計基準第38項、BC22項及びBC23項)。

    また、本会計基準の適用初年度においては、従来作成していた財務諸表(四半期財務諸表)と異なる種類の財務諸表(中間財務諸表)を新たに作成することになると考えられるため、適用初年度において従前の四半期財務諸表において採用していた会計方針(年度の会計方針との首尾一貫性が求められる会計方針を除く。)と異なる会計方針を採用する場合には、会計方針の変更に該当せず新たに会計方針を採用することになると考えられます(本会計基準BC24項)。


3. 参考

本会計基準等の公表に至る過程において、今後の四半期会計基準等の取扱いについては、下記の通り方向性が示されています。
すなわち改正後の金融商品取引法により四半期報告書制度は廃止されますが、上場会社においては引き続き取引所規則に基づき第1・第3四半期決算短信の報告が行われるため、今後、期中財務諸表に関する会計基準等の開発が行われるまでの間、四半期会計基準等は適用を終了しないことを予定しているとされています。(*4)

<参考文献>

(*1) 企業会計基準委員会. “企業会計基準第33号「中間財務諸表に関する会計基準」等の公表”. 2024年3月22日.
https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards/y2024/2024-0322.html
(*2) ASBJ専門研究員 山田 正顕. “◇公表基準等の解説◇ 企業会計基準第33号「中間財務諸表に関する会計基準」等の概要”.
https://www.asb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/20240322_manual.pdf ,(参照2024-04-10).
(*3) 金融庁. “事務局資料(四半期開示の見直しに伴う監査上の論点-四半期レビュー基準の改訂に向けた検討-)”. 2023年9月5日.
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/siryou/kansa/20230904/01.pdf
(*4)企業会計基準委員会. “企業会計基準公開草案第80号「中間財務諸表に関する会計基準(案)」等の公表”. 2023年12月15日.
https://www.asb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/chukan_2023ed_01.pdf

以上

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