監査基準の改訂による個別の財務表又は財務諸表項目等の監査について教えてください

2014年06月08日 更新

■ ご質問

平成26年2月18日に監査基準が改訂され、従来の金商法や会社法に基づく一般目的の適正性監査とは異なった、特定の利用者のニーズを満たすべく、特別の利用目的に適合した監査が明確にされております。
例えば、今後は、貸借対照表のみの監査、売上高計算書のみの監査、金融機関から融資を受けるためのキャッシュ・フロー計算書のみの監査も可能ということですか。

■ 回 答

イ.公認会計士監査は、従来から金商法や会社法に基づく監査のように、幅広い利用者に共通するニーズを満たすべく一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成された財務諸表に対する適正性の監査が中心になっておりましたが、近年、公認会計士に対して、特定の利用者のニーズを満たすべく特別の利用目的に適合した会計の基準に準拠して作成された財務諸表に対しても監査を求める要請が高まってきております。

ロ.それらを受けて、今回、監査基準の改訂において、個別の財務表(例えば、貸借対照表、キャッシュ・フロー計算書など)や個別の財務諸表項目等(例えば、売掛金、売上計算書など)に対して監査基準が適用されることが明確になり、準拠性に関する意見表明が可能となりました。したがって、今後は、完全な一組の財務諸表に対する監査ではなく、貸借対照表のみの監査、売上高計算書のみの監査、キャッシュ・フロー計算書のみの監査等も実施されることになります。

*根拠となる規定
「監査基準の改訂について」「二 主な改正点とその考え方」「2 実施基準の改訂」において、「財務諸表を構成する貸借対照表等の個別の財務表や個別の財務諸表項目等に対する監査意見を表明する場合についても、監査基準が適用される(その際、監査基準中「財務諸表」とあるのは、必要に応じ「個別の財務表」又は「個別の財務諸表項目等」と読み替えるものとする。)。」とされています。

ハ.監査基準の改訂を受けて、日本公認会計士協会からは、監査基準委員会報告書805「個別の財務表又は財務諸表項目等に対する監査」が公表されております。
  そこにおいて、「個別の財務表」及び「個別の財務諸表項目等」の定義付けがされております。

* 個別の財務表
   貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書等のそれぞれを指し、関連する注記(重要な会計方針の要約と、財務表に関連するその他の説明情報から構成される。)が含まれる。

* 財務諸表項目等
     財務諸表の構成要素、勘定又はその他の項目を意味し、関連する注記(重要な会計方針の要約と、財務諸表項目等に関連するその他の説明情報から構成される。)が含まれる。財務諸表の構成要素は、財務諸表に計上されている企業の取引その他の事象を経済的特徴に従って分類したもので、例えば、資産、負債、純資産、収益及び費用等がある。

 ニ.また、監査基準委員会報告書805の(付録2)では、個別の財務表又は個別の財務諸表項目等に対する監査報告書文例も示されております。
 <個別の財務表又は財務諸表項目等に対する監査報告書の文例>
 (財務表)
 ① 会社計算規則に基づき作成した貸借対照表のみを対象とした任意監査 
 ② 金融期間との契約において定められている財務報告に対する取決めに基づいて作成したキャッシュ・フロー計算書に対する任意監査
 ③ 災害義捐金・補助金・寄付金等の収支報告を資金提供者に報告・開示するために作成する資金収支計算書に対する任意監査
 ④ 規制当局に提出することが法令で求められている○○事業部門別収支計算規則に基づく部門別収支計算書に対する監査

 (財務諸表項目等)
 ⑤ ○○国の税務当局に提出する○○国への出向者に対する日本国内における給与の支払額を記載した給与支払明細表に対する監査
 ⑥ ライセンサーに提出が求められているロイヤリティ契約の要求事項を満たすために特定の商品に係る売上高計算書に対する任意監査

ホ.なお、個別の財務表又は財務諸表項目等に対する監査意見を表明する場合であっても、単にそれらの検討にとどまることなく、意見を表明するために必要な範囲で、内部統制を含む、企業及び企業環境を理解し、これらに内在する事業上のリスク等が重要な虚偽の表示をもたらす可能性を考慮しなければならないこととされていますので、これまでと同様に監査基準に準拠したリスク・アプローチに基づく監査を適切に実施していくことになりますので留意する必要があります。

ヘ.改訂監査基準の適用時期については、必要な準備期間の関係から、平成27年4月1日以後に開始する事業年度等に係る監査からの適用となっています(平成26年4月1日以後に発行する監査報告書から適用することは妨げない)。
以  上