平成26年度税制改正大綱 ~交際費課税の見直し~

2014年01月07日 更新

平成25年12月12日において与党の平成26年度税制改正大綱(以下「大綱」とします)が決定されました。

大綱においては、4つの考え方~
一 デフレ脱却・日本経済再生に向けた税制措置
二 税制抜本改革の着実な実施
三 復興支援のための税制上の措置
四 円滑・適正な納税のための環境整備
を基礎に、様々な政策税制が決定されています。

この4つの考え方のうち、一 に基づく具体的な政策税制として、経済の好循環を早期に実現するための「復興特別法人税の1年前倒しの廃止」、民間投資と消費の拡大のための「生産性の向上につながる設備等への投資を促進するための税制等の創設」、「交際費課税の見直し等」が決定されました。
本稿においては、このうち「交際費課税の見直し」について取りあげてみたいと思います。

大綱では交際費課税の見直しについて、具体的に以下のような記載しています。
「交際費等の損金不算入制度について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する。

① 交際等の額のうち、飲食のための支出する費用の額の50%を損金の額に算入することとする。
(注)飲食のために支出する費用には、専らその法人の役員、従業員等に対する接待等のために支出する費用(いわゆる社内接待費)を含まない。
② 中小法人に係る損金算入の特例について、上記①との選択適用とした上、その適用期限を2年延長する。」

ここで留意しなければならないのは、①において50%の損金算入の対象になるのは、交際費全額ではなく、そのうち飲食のために支出する費用の額に限られるということです。

そうすると問題となるのは、その飲食のために支出する費用の額の範囲ということになりますが、税務通信(3292号)では、租税特別措置法61条の4第3項2号のいわゆる少額飲食費(5千円基準の飲食費)の範囲と同様となる見込みである旨報じられています。

少額飲食費は、租税特別措置法において「飲食その他これに類する行為のために要する費用」として規定されていますが、この「飲食その他これに類する行為」の範囲については、租税特別措置法通達61の4(1)-15の2において具体的に定めています。

ここで、本通達の基になっている「交際費等(飲食費)に関するQ&A」(平成18年5月:国税庁)も参考になるものと思われます。

このQ&Aにおいては、得意先等を飲食店等へ送迎するための費用は、飲食等のために要する費用とはならないが、飲食店等に支払うサービス料は飲食等のために要する費用該当することや、ゴルフ等の催事に際しての飲食等は、原則としてゴルフ等の費用に含まれ、飲食等のために要する費用に該当しないことなどが明らかにされています。

また、大綱における「飲食のために支出する費用」は少額飲食費と同様に社内接待費を含まないことになっており、どこまでが社内接待費となるのかが問題となりますが、この範囲についても当該Q&Aが参考になります。

さらに、少額飲食費については、一人当たり5千円であることや社内接待費でないことを明らかにするために、交際費等の範囲から除外する要件として、租税特別措置法61条の4第4項において一定の事項を記載した書類を保存することが求められています。

同様の趣旨から、50%損金算入の対象となる飲食のために支出する費用についても、一定の事項を記載した書類を保存することが求められるものと思われます。

今回の改正により5千円という上限が無くなり、飲食に関するものに限定されるものの、その支出額の半分が損金に算入されることから、多少なりとも大企業にとっては、交際費支出のインセンティブになるのではないでしょうか。

交際費課税の見直しを含め今回決定された政策税制の効果は、事後的にしっかり検証を行うなどにより、その有効性や必要性について国民の理解を得ることが重要であると大綱において記載されており、その検証結果がどのようなものになるのか、気になるところであります。

(公認会計士 木頭孝男)