消費税増税に際しての経理上の注意点 

2013年11月06日 更新

改正消費税法により、消費税率が、平成26年4月1日を施行日として5%から8%へ、平成27年10月1日を施行日として8%から10%へと引き上げられることとなりました。前者の5%→8%への引き上げ時期は、もう間もなくですが、それを迎えるに当たって、会社の経理処理の中で、確認しておきたい細かい論点について述べたいと思います。

1.返品等があった場合の処理

施行日より前に販売した商品が、施行日以後に返品されたり、値引き、割戻しされたりした場合は、消費税の納税額計算は旧税率を基礎として計算することになります。
例えば、平成27年3月期の決算において、売上が10,800(税込 新税率)で、平成26年3月期に販売した商品の返品が3,150(税込 旧税率)あった場合、当期の消費税の納税額は、
10,800 × 8/100 - 3,150 × 5/105 = 650
になります。これは仕入の返品等があった場合も同様です。

なお、施行日前後の返品等について、たとえば、当月の返品等は前月の販売に対するものとして継続的に処理している場合、平成26年4月中の返品については平成26年3月中の販売に対応するものとして、旧税率によって売上げに係る対価の返還等の計算を行っても構いません。但し、このように取り扱う場合には、取引当事者間において取り交わす請求書等に適用税率を明記し、取引の相手方は当該請求書等に記載された税率により仕入れに係る返品等に係る消費税額を計算することとなります。
(参考)
消費税法附則第9条、第11条
平成 26 年4月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱い Q&A 問5

2. 貸倒れがあった場合の処理

上記1の返品等の場合と同様に、旧税率が適用された課税売上に係る売上債権について、新法施行日以後に貸倒れがあった場合は、旧税率を基礎として消費税の納付税額を計算することになります。

(参考)
消費税法附則第12条

3. 工事進行基準についての処理

請負の経過措置の要件を満たすためには、指定日(平成25年10月1日)の前日までに契約が締結されている必要がありますが、消費税法上の処理として、工事進行基準が選択された工事の場合は、施行日の前日である平成26年3月31日までに契約すれば、請負の経過措置は適用できないものの、別途経過措置の対象となり、平成26年3月31日までに計上した工事収益については、旧税率の5%を適用することができます。

この工事進行基準の経過措置の適用を受けた場合には、受注者は発注者に対し、経過措置の適用を受ける旨及び適用を受けた部分に係る対価の額を書面により通知する必要があります。これは、受注者側で旧税率により売上計上した部分は、発注者側でも旧税率により仕入税額控除をすることとされているためです。また、工事進行基準の経過措置に関しては、通知がないと、経過措置の適用の有無や、適用を受けた金額が、発注者側で判断できないため、請負の経過措置と比較して、通知の重要性は高いと考えられます。

(参考)
消費税法附則第7条
消費税法施行令附則第9条
平成 26 年4月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱い Q&A 問54

4. リースについての処理(平成20年4月1日以後契約のファイナンス・リース)

平成20 年4 月1 日以後に契約を締結したファイナンス・リース取引については、原則としてリース資産の引渡時に売買があったものとして取り扱われます。消費税について、売買があった場合には、その資産の引渡時の税率が適用されるので、施行日前に引渡があった場合は、旧税率の5%、施行日以後に引渡があった場合は、新税率の8%の税率が適用されることになります。また、賃借人が賃貸借処理によって、消費税をリース料支払時に計上する分割基準を採用している場合でも、適用する税率は引渡のタイミングが施行日前か施行日以後かで、旧税率の5%または新税率の8%が適用されることになります。

(参考)
消費税法基本通達5-1-9
国税庁質疑応答
消費税法施行令第32 条の2
消費税法施行令第36 条の2
消費税法施行令附則第6 条、第8 条

5. リースについての処理(平成20年3月31日以前契約のファイナンス・リース)

平成20年3月31日以前に契約を締結したファイナンス・リース取引は、「売買」又は「金融」とされる取引を除き、賃貸借処理となります。賃貸借処理をしている場合の消費税の取扱いは、「資産の貸付け」として取り扱われます。すなわち、指定日の前日である平成25年9月30日までに締結した契約に基づいて、施行日の前日である平成26年3月31日以前から引き続き、資産の貸付が行われており、次の①及び②又は、①及び③に掲げる要件に該当するときは、施行日以後に行う当該資産の貸付けに係る消費税については、旧税率である5%とする経過措置が講じられています。
当該契約に係る資産の貸付けの期間及び当該期間中の対価の額が定められていること。
事業者が事情の変更その他の理由により当該対価の額の変更を求めることができる旨の定めがないこと。
契約期間中に当事者の一方又は双方がいつでも解約の申入れをすることができる旨の定めがないこと並びに貸付に係る資産の取得に要した費用の額及び付随費用の額(利子又は保険料の額を含む)の合計額のうちに契約期間中に支払われる資産の貸付けの対価の額の合計額の締める割合が100分の90以上であるように契約において定められていること。
(参考)
消費税法附則第5 条第4 項
消費税法附則第5 条第7 項

6. リースについての処理(オペレーティング・リース)

オペレーティング・リース取引については、賃貸借処理となり、消費税の取扱いにおいも、資産の貸付けとして取り扱われます。よって、上記5の取り扱いと同様の取り扱いとなり、施行日である平成26年4月1日後も旧税率である5%が適用される余地があります。

7. 保守契約などの役務の提供について

保守契約などのモノの引き渡しを要しない役務の提供については、税務上は、役務の全部を完了した日が、課税売上の認識時期となります。保守契約等については、期間に応じて日々役務が完了していると考えられますので、例えば平成26年1月から1年間の保守契約を締結している場合は、平成26年3月分までの保守料は、旧税率である5%が適用され、平成26年4月分からの保守料は、新税率である8%が適用されることになります。
しかし、上記のような場合で、その1年分の保守料を契約締結時に一括して受領する場合に、中途解約しても保守料の全部または一部を返還する定めがない等の理由で、受領した保守料を期間按分せず、受領時に一括して収益計上している場合には、消費税においても受領時に一括して課税売上を計上することになります。この場合、保守料の一括受領日が、平成26年3月31日以前であれば、全額について旧税率の5%を適用しても差し支えないと考えられます。

(参考)
平成 26 年4月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱い Q&A 問4
以上

(公認会計士 平安 宏充)