「税効果会計に関するQ&A」改正のポイント

2013年03月05日 更新

日本公認会計士協会(会計制度委員会)は退職給付会計基準の改正を受け、平成25年2月7日付で「税効果会計に関するQ&A」の改正を公表しました。ここではQ&Aの改正についてポイントを解説します。なお、平成25年2月27日には「会計制度委員会報告第13号『退職給付会計に関する実務指針(中間報告)』及び『退職給付会計に関するQ&A』の廃止について」を公表し、退職給付会計に関する基準及び実務上の指針は、企業会計基準委員会(ASBJ)が作成したものに一本化されています。

企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」の適用により、平成25年4月1日以降開始する事業年度の年度末に係る連結財務諸表において未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用(以下「未認識項目」という。)を、税効果を調整の上で貸借対照表に計上することになりました。その一方、個別財務諸表においては従来通り未認識項目は貸借対照表には計上しません。そこで、連結財務諸表と個別財務諸表の税効果会計について、Q&Aではその考え方が示されています。

退職給付会計基準の適用により、連結財務諸表上、未認識項目を、税効果を調整の上でその他の包括利益累計額で認識し、積立状況を示す額をそのまま負債(退職給付に係る負債)又は資産(退職給付に係る資産)として計上することになります。一方、個別財務諸表上は当面の間、改正前の取り扱いを継続することとされています。この退職給付会計基準の適用による個別財務諸表上の退職給付引当金と連結財務諸表上の退職給付に係る負債についての税効果会計の取り扱いは以下のようになるものと考えられます。

(1) 個別財務諸表と連結財務諸表の繰延税金資産の回収可能性

未認識項目を負債(又は資産)として認識する会計処理は、連結手続の一環であり、当該連結手続に関する連結修正項目により生じた一時差異は、連結手続上生じた将来減算一時差異及び将来加算一時差異と考えられます。連結手続上生じた繰延税金資産の回収可能性については、「連結手続上生じた将来減算一時差異に係る税効果額は、納税主体ごとに個別貸借対照表上の繰延税金資産の計上額と合算し、回収可能性の判断要件及び繰延税金資産の連結貸借対照表への計上の可否及び計上額を決定し、計上した繰延税金資産の修正を行わなければならない。」とされています。

したがって、連結財務諸表上の「退職給付に係る負債(又は資産)」に係る税効果については、まず、個別財務諸表における退職給付引当金に係る一時差異に対する繰延税金資産の額を計上し、これに連結修正項目についての税効果額を合算し、この合算額についての回収可能性を判断することになるものと考えられます。

(2) 監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」との関係

個別財務諸表における繰延税金資産の回収可能性の判断と、この個別財務諸表における繰延税金資産に連結修正項目に係る繰延税金資産を合算した連結財務諸表における繰延税金資産の回収可能性の判断は、未認識項目を連結貸借対照表上で負債(又は資産)として即時認識するか否かにより将来年度の課税所得の見積りが変わるものではないため、同じになるものと考えられます。

また、連結財務諸表における「退職給付に係る負債(又は資産)」に係る一時差異に対する繰延税金資産の回収可能性の判断は、未認識項目を連結貸借対照表上で負債(又は資産)として即時認識するか否かによって影響を受けるものではないと考えられます。このため、繰延税金資産の回収可能性の判断において、過去の業績等に基づいて、将来年度の課税所得による繰延税金資産の回収可能性を判断する場合が多いと思われますが、連結財務諸表における会社分類は、個別財務諸表における会社分類と変わらないものと考えられます。

例えば、66号報告の会社分類が①(期末における将来減算一時差異を十分に上回る課税所得を毎期計上している会社等)である場合において、個別財務諸表における将来減算一時差異を十分に上回る課税所得を毎期計上していますが、連結修正(未認識項目の負債認識)において生じる将来減算一時差異を考慮すると、将来減算一時差異を十分に上回る課税所得を毎期計上していないことになる場合も考えられます。この場合においても、連結財務諸表における会社分類は個別財務諸表における会社分類と同じ①とし、連結手続上生じた繰延税金資産の全額について、その回収可能性があると判断されるものと考えられます。

なお、将来減算一時差異に係る将来解消年度が長期となる将来減算一時差異としての取扱いは、連結修正(未認識項目の負債認識)において生じる将来減算一時差異についても同様に当てはまるものと考えられます。これは、連結財務諸表上の退職給付に係る負債と個別財務諸表の退職給付引当金の帳簿価額は、当初は相違があっても、未認識項目の認識のタイミングのずれによるものであり、将来減算一時差異としての性質は異なるものではないためです。

つまり、個別財務諸表上における未認識項目は、発生後、償却を通じて退職給付引当金として認識され、償却が終了した時点で当該未認識項目はすべて個別財務諸表上の退職給付引当金に係る一時差異となることから、連結財務諸表上の退職給付に係る負債と個別財務諸表の退職給付引当金の帳簿価額は一致するものであり、連結修正(未認識項目の負債認識)において生じる将来減算一時差異は解消するものであるためです。

(3) 回収可能性の見直し時の会計処理

退職給付引当金及び退職給付に係る負債に係る将来減算一時差異についての繰延税金資産の回収可能性が過去においてはないと判断されていたものについて、その後回収可能性があると判断された場合(会社分類が⑤から⑤以外になった場合、又は④本文から①、②若しくは③になった場合)、まず、個別財務諸表における退職給付引当金について法人税等調整額を相手勘定として繰延税金資産を計上します。これに加え、未認識項目の負債認識において生じる将来減算一時差異について回収可能性があると判断される場合には、当該一時差異についても一部又は全額の繰延税金資産を退職給付に係る調整額を相手勘定として計上することになるものと考えられます。

一方、退職給付引当金及び退職給付に係る負債に係る将来減算一時差異についての繰延税金資産の回収可能性があると判断していたものについて、回収可能性がないと判断された場合(会社分類が①、②、③又は④ただし書から④本文又は⑤になった場合、又は④本文から⑤になった場合)、個別財務諸表における退職給付引当金に係る将来減算一時差異が優先して解消するものとして繰延税金資産の額を算定することになります。

すなわち、個別財務諸表において退職給付引当金に係る繰延税金資産の見直しを行い、回収可能性があるものと判断される額を超えて計上されていた繰延税金資産の額について法人税等調整額を相手勘定として取崩しを行います。この場合、連結財務諸表上、個別財務諸表上の取崩しの処理に加え、未認識項目の負債認識において生じる将来減算一時差異に対応する繰延税金資産は、すべてが回収可能性のあるものと判断される額を超える額となりますので、退職給付に係る調整額を相手勘定として取崩しを行うことが考えられます。

(公認会計士 上田 昌宏)