2012年10月04日 更新
清陽メールマガジン第 5号において、IFRS(国際財務報告基準)を巡る動向について取り上げたが、平成 24年 7月に、企業会計審議会が「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方についてのこれまでの議論(中間的論点整理)」を取りまとめたため、本論点整理について以下説明することとする。 なお、本論点整理において、IFRS への対応について最終的な結論が出ているわけではなく、さらに審議を継続して議論をコ ラ ム 深める必要があるとしている。本論点整理の主な内容は以下のとおりである。
会計基準の国際的な調和に向けた努力は継続する必要があり、日本基準を高品質化するような会計基準の変更については、前向きに対応することが適当である。ただし、その際、当期純利益の明確な位置づけ、公正価値測定の適用範囲の整理等の視点は重視していく必要があると考えられる。
諸外国の状況をみると、各国の制度や経済状況などを踏まえて、IFRS の導入に関しては様々な対応が模索されている。わが国においても、国際情勢を踏まえつつ、わが国の制度や経済状況などに最もふさわしい対応が検討されるべきである。
IFRS財団(IASBを含む)に対しては、人的、資金的貢献を継続するとともに、欧州・米国のほか、アジア・オセアニア諸国と連携し、わが国の関係者が一丸となって意見発信の努力を継続することが適当である。
国際的には連結財務諸表がより重視される一方、単体財務諸表については、会社法、税法、その他の規制等との関連に配慮が必要となる。また、単体開示のあり方については、会社法の開示をも活用して、企業負担の軽減に向け、どのような対応が可能かに関して検討を行うことが適当である。
上場していない中小企業等の会計については、IFRSの影響を受けないようにするというこれまでの方針を維持することが適当である。
IFRS適用に関しては引き続き審議を継続する一方、現行制度の下で、IFRS適用の実例を積み上げるとともに、その中で、どのような点が具体的にメリット・デメリットとなるのかを十分に把握し、それに対応するための取組みを検討・実行していくべきであると考えられる。
原則主義への対応に関しては、各会計関係者における実務的な取組み、例えば、
・作成者における、経営としての主体的判断に基づく、会計方針の設定・会計処理
・監査人における、IFRSの適切な理解・適用、わが国監査法人の主体的役割、企業との密接なコミュニケーション
・当局における、例えば、必要に応じたプリクリアランス制度の導入や執行上のガイダンスの策定など、適切な執行を確保するための方策
等について、各関係者間において適切な連携を行いつつ、任意適用企業において新たに把握される問題点も含め、検討を深めていくことが必要であると考えられる。
(公認会計士 槇田憲一郎)