「包括利益の表示に関する会計基準」の改正

2012年09月07日 更新

企業会計基準委員会(ASBJ)は平成 24 年6 月 29 日に、改正企業会計基準第 25 号「包括利益の表示に関する会計基準」(以下、改正会計基準)を公表しました。

1. 個別財務諸表への適用

平成 23 年 3 月 31 日以後に終了する連結会計年度から適用されている改正前の企業会計基準第 25 号(以下、改正前会計基準)では、連結財務諸表のみ先行して適用されることが定められ、個別財務諸表に対する適用に関しては、その公表から 1 年後を目途に、再度判断することとなっていました。 この点、ASBJ の審議の結果、依然として市場関係者の意?が大きく分かれていること及び個別財務諸表における包括利益に係る主な情報は現状の株主資本等変動計算書から入手可能でもあること等を総合的に勘案して、当面の間、個別財務諸表に同基準が適用されない旨が定められました(改正会計基準 16-2 項)。

2. 計算書の名称

ASBJ では、包括利益に関する計算書の名称の変更に関しても審議を行いました。これは、国際会計基準(IASB)での検討状況を参考に、名称変更の検討の必要性があるという意?を斟酌したためです。 この点、ASBJ は現行の名称が定着しつつあること、IASB が策定した改訂 IAS1 号「財務諸表の表示」では他の名称を使用することも容認されていることなどから、現行の名称(※)を維持することを決定しました(改正会計基準 37-2項)。
(※)

1 計算書方式:「損益及び包括利益計算書」
2 計算書方式:「損益計算書」、「包括利益計算書」

3. 為替予約等の振当処理、金利スワップ等の特?処理と組替調整額等の注記

改正前会計基準においては、為替予約等の振当処理や金利スワップ等の特?処?を採用している場合の組替調整額の注記の要否について、明確には規定されていませんでした。 この点、金利スワップ等の特?処?については、会計処?上、その他の包括利益である繰延ヘッジ損益が計上される余地はないため、組替調整額及びこれに準じた開示は当然に不要であると考えられ、改正会計基準においても、特に明文化はされておりません。

 
次に、為替予約等に関する振当処理に関して、会計処理上、繰延ヘッジ損益が計上されるケースは、いわゆる外貨建予定取引が想定されますが、この繰延ヘッジ損益に関しても、一旦期末に計上されるものの、翌期首には洗替えの処?が?われます。 そして、実際の外貨建取引の実行時には、為替予約相場により会計処理されるため、繰延ヘッジ損益に関する会計処理は?われません。 このような点を踏まえて、改正会計基準の「結論の背景」において、「為替予約の振当処?は実務に配慮して認められてきた特?的な処理であること等を勘案すると、組替調整額及びこれに準じた開示は必要ないと考えられる」という表現が追記されることにより、組替調整額の注記が不要であることが明文化されました(改正会計基準 31 項(2))。

4. 適用時期

改正会計基準は、現行の取扱いを変更するものでないことを考慮して、適用時期については、公表日(平成 24年 6月29 日)以後に適用とされています(改正会計基準 16-3 項)。

(公認会計士 平安 宏充)