退職給付に関する会計基準等の改訂について

2012年08月07日 更新

企業会計基準委員会(ASBJ)は平成 24 年 5 月 17 日、企業会計基準第 26 号「退職給付に関する会計基準」と、企業会計基準適用指針第 25 号「退職給付に関する会計基準の適用指針」を公表しました。
この改訂は、日本基準と IFRS の差異を埋めるコンバージェンス活動の⼀部となっております。
主な内容は以下の通りです。

コ ラ ム 1.未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費⽤の処理⽅法

従来の会計基準等では、未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用については貸借対照表に計上せず、これに対応する部分を除いた、退職給付債務と年⾦資産の差額を負債(⼜は資産)として計上することとされておりました。
改訂後は、未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用を、税効果を調整の上で貸借対照表の純資産の部(その他の包括利益累計額)で認識し、退職給付債務と年⾦資産額の差額をそのまま負債(退職給付に係る負債)⼜は資産(退職給付に係る資産)として計上することとされます。
つまり、未認識部分のオフバランス処理は認められず、貸借対照表上は即時認識されることとなります。
未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の費用処理方法については、従来と同様に平均残存勤務期間以内の⼀定の年数で規則的に費用処理されます。 ただし、数理計算上の差異及び過去勤務費用の当期発⽣額のうち、費用処理されない部分についてはその他の包括利益に含めて計上し、その他の包括利益累計額に計上されている未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用のうち、当期に費用処理された部分についてはその他の包括利益の調整(組替調整)を⾏うこととなります。
なお、以上の会計処理は連結財務諸表のみで適用され、個別財務諸表上は従来の取り扱いによることとされております。

2.退職給付債務及び勤務費⽤の計算⽅法

改訂基準等では、退職給付⾒込額の期間帰属方法として、次の方法の選択適用を認めています。
① 期間定額基準
② 給付算定式基準(退職給付制度の給付算定式に従って各勤務期間に帰属させた給付に基づき⾒積った額を、退職給付⾒込額の各期の発⽣額とする方法)
IFRS では、②の方法によることとされていますが、日本基準では、従来から多くの企業が採用していた①の方法も選択できることとなります。
また、従来の会計基準等では、割引率の基礎となる期間について、従業員の平均残存勤務期間に近似した年数とすることも認められました。
改訂基準等では、割引率は、退職給付⽀払ごとの⽀払⾒込期間を反映するものでなければならないものとし、具体的には、退職給付の⽀払⾒込期間及び⽀払⾒込期間ごとの⾦額を反映した単⼀の加重平均割引率を使用する方法や、退職給付の⽀払⾒込期間ごとに設定された複数の割引率を使用する方法によることとされています。

3.まとめ

現状の退職給付会計において、多くの企業は未認識項目が借方差異になっていると思われます。よって、改正後は負債(退職給付に係る負債)が増加し、純資産が減少するケースが多くなると思われます。
また、割引率の基礎となる期間について、改訂後は多くの企業では単⼀の加重平均割引率が採用されることと思われますが、その場合でも割引率の変更が必要となり、退職給付債務が増減する可能性があります。

(公認会計士 永井圭介)