消費税個別対応方式・課税売上割合に準ずる割合 ~ 95%ルールの見直し

2012年05月07日 更新

公認会計士 田中 仁

 仕入税額控除制度における、いわゆる「95%ルール」の適用要件が見直されました。

従来、一般課税により申告を行う事業者(簡易課税適用事業者でない事業者)のうち、課税売上割合が95%以上の事業者は、課税仕入れ等に係る消費税額を全額控除することができましたが、平成24 年4 月1 日以後に開始する課税期間から、売上高基準が追加され、「課税売上割合が95%以上かつ課税売上高が5億円以下」の場合にのみ全額を控除することができることとされました(消費税法第30条第2項)。

よって、課税売上高が5億円を超える場合には、原則通り個別対応方式又は一括比例配分方式のいずれかの方法により仕入控除税額の計算を行うことになります。

個別対応か一括比例配分か

上記の「95%ルール」の見直しは、いわゆる益税を解消し課税の公平を図るために改定されたものですが、一定の規模以上の事業者にとっては実質的な増税になったといえるでしょう。将来の消費税率アップの議論も進められる中、当事業年度(平成24年4月1日以降開始される事業年度)は消費税申告に係る重要な事業年度になります。

特に、個別対応方式を適用するか一括比例配分方式を適用するかの判断は、各事業者の選択に委ねられていますが、一括比例配分方式を適用した場合には、2年間継続して適用することが要件とされています(消費税法第30条第5項)ので、当事業年度は適切なシミュレーションにより慎重に意思決定する必要があります。なお、一括比例配分方式を適用した事業者は、次に説明する課税売上割合に準ずる割合の適用はできません(消費税法第30条第3項)ので注意して下さい。

課税売上割合に準ずる割合

個別対応方式は、個々の課税仕入れ等の全てについて、①課税売上対応分、②非課税売上対応分及び③共通対応分に区分し(「用途区分」し)、その区分が明らかにされている場合に適用できる計算方法です。

そして、③共通対応分に係る仕入控除税額は、共通対応分に係る消費税額に課税売上割合を乗じて計算されます。これを踏まえ、消費税法基本通達(以下、「基通」という。)11-2-19は、一義的には「共通対応分として区分された課税仕入れ等であっても、製品製造原価となる原材料、梱包材料、倉庫料、電力料等のように、課税資産の譲渡等又は非課税資産の譲渡等との対応関係が明確かつ直接的で、生産実績のように既に実現している事象の数値のみによって算定される割合で、その合理性が検証可能な基準により機械的に区分することが可能なものに限っては、当該合理的な基準により区分することとして差し支えない」ものとしています。

さらに、次のア及びイを満たす場合には、より事業実態に則した「課税売上割合に準ずる割合」により仕入控除税額を計算することができることとされています(消費税法第30条第3項)。

ア.事業の種類又は当該事業に係る販売費、一般管理費その他の費用の種類に応じ合理的に算定されるものであること(課税売上割合で計算した仕入控除税額がその事業者の事業の実態と乖離した結果となる場合など)。
イ.事業者が事前に税務署長の承認を受けること。

そして、基通11-5-7では「課税売上割合に準ずる割合」の例として「使用人の数又は従事日数の割合、消費又は使用する資産の価額、使用数量、使用面積の割合」が掲げられています。また、その事業者における事業内容等の実態を反映したものである限り、事業部門ごとに課税売上割合と同様の方法により求めた割合を、「課税売上割合に準ずる割合」として使用することも認められるものと解されます(「95%ルール」の適用要件の見直しを踏まえた仕入控除税額の計算方法等に関するQ&A(平成24年3月国税庁)【基本的な考え方編】問24)。

おわりに

「課税売上割合に準ずる割合」は、昨年の消費税法の改正以前から存在していた規定ですが、実務上あまり使われていなかったようです。しかし、課税売上高が5億円を超える事業者も個別対応方式と一括比例配分方式の選択を迫られることになりました。一般にこのような規模の会社では、セグメント情報開示のため、あるいはより厳密な経営管理のために事業の種類別、製品別等の会計システムが構築されています。会社の経理部門にはこれらをより有利な消費税申告のために生かしていくことも期待されるでしょう。