2012年12月14日 更新
最近、シンガポールとタイに行くことが多くなりました。これらのうちシンガポールは一年を通して温暖湿潤で、治安も良く、住むには非常に良い環境です。特にこの 12 月の日本の寒さが堪えるような方にはもってこいの国だと思います。
このシンガポール、言わずと知れた税金の安い国です。税率としては、法人税 17%、所得税累進税率最高 20%、消費税(GST)7%、相続税・贈与税なしで、日本の税率に比べかなりの競争力があります(日本は消費税の増税予定により、直接税・間接税ともにシンガポールに比べて高くなります。また、日本には住民税、右肩上がりの社会保険料が存在し、負担感は非常に大きいです。)。
当然、ここまで税金が安いと世界中の金回りの良い法人と自然人(我々の様な人間のこと)が集まってきます。そのためIMF の調べによれば、2011 年の一人当たり GDP は、シンガポールがアジアで 1 位の 49,270 米ドルに対し、日本はアジアで2 位の 45,869 米ドルとなっており、既にアジアの 1 位の座を明け渡しています。また、ボストンコンサルティンググループの調べでは 2011 年において、金融資産が 100 万米ドル以上の富裕世帯比率はシンガポールが 15.5%に対し、日本は 3%となっています。なお、帝国書院の調べによれば 2010 年の人口密集度は日本が 337 人/k ㎡に対し、シンガポールは 7,279 人/k㎡となっており、総合すればお金持ちが密集している国と言えます。
お金持ちの大抵は車を持とうとします。国土面積は小さく、人口密集度が高いですから、お金持ちが自由に車を持つと渋滞が酷くなり、物流や金が回らなくなる恐れがあります。そのため、シンガポール政府は、利用制限(都心部へ流入する車に対し日本の ETC みたいなシステムで課金をする等の政策)と取得制限(新規車両登録証取得は入札により実施、自動車輸入税 20%課税等で日本の 2~3 倍の取得費が必要)をしています。
ようやく会計の話です。上記の流れを受けて、シンガポールにおいては 1998 年 4 月 1 日以降の登録された車については、車両費は全額損金不算入です。ガソリン代、修理費用、レンタカー費用等、車両に関する費用は一切損金不算入となります。減価償却もできません。では売却したらどうなるか。当然、減価償却が認容されているわけではないですから簿価は高く、売却損、つまりキャピタルロスがでます。ところが、シンガポールではキャピタルゲインが益金不算入である代わりに、キャピタルロスも損金不算入となります。よって、車関係費は一切損金で落ちないということになります。 税金の面から考えるとシンガポールにおける車両所有はメリットがないと言えます。
(公認会計士 相川聡志)