2021年12月13日 更新
川崎 大介
コロナ禍の対応として、多くの監査法人において、「リモート監査」が実施され、現在も一部の業務において継続中です。
昨年10月配信の当コラムに「リモート監査雑感」として、リモート監査を実施して、個人的に考えたこと、リモート監査のメリット、デメリットなど記載させて頂きました。その中で、リモート監査のデメリットの一つとして、監査の有効性の低下について触れ、「これは、本来あってはならないことですが、入手される情報が限定的になったり、監査手続が限定的になったり、あるいは、対クライアントのコミュニケーション、監査チーム内のコミュニケーションが不足することで、監査の有効性が害されている可能性はあるように思います。」と私見を記載しておりました。
それから、1年近くが経過した、今年8月24日の日経新聞で「会計不正、公表46%減 在宅勤務普及で発見に壁」という記事を目にしました。詳細は記事をご参照頂くとして、内容を簡潔にまとめると、2021年3月末までの1年間で会計不正を公表した企業は25社で、前の年度に比べて46%減ったが、その要因は、コロナ禍で対面の機会が減り、不正が発見されにくくなったことにあるのではないか、というものでした。ここで言う、会計不正とは、いわゆる財務諸表に虚偽表示を行う「粉飾決算」と横領等の「資産流用」を含みます。
上記記事の内容を踏まえて、皆様はどのように思われたでしょうか? 私個人としては、やはり…という思いも感じつつ、短期間でここまで如実に数字に現れたことには正直驚きました。これには様々な要因が考えられると思いますが、個人的には、我々外部の会計監査人の監査の有効性低下の可能性に加え、会社内での内部監査を含む内部統制が機能しにくくなったことも大きな要因ではないかと推測します。上記記事内でも、近年増加傾向にあった、海外子会社における会計不正の発生がほぼ半減しており、本社社員の訪問が難しく、発見しにくくなった可能性がある旨の記載がありました。
直近足下では、国内の新規コロナ感染者数は激減し、多くの会社で除々に勤務体制の見直しや移動の制限を緩める動きが出ています。単純に元に戻すことが必ずしも良いとは思いませんが、非常時の対応として簡略化されていた確認、承認行為、内部監査等の内部統制があれば、その必要性、有効性を再検討すべきタイミングではないかと感じています。内部統制の有効な運用には一定のコストを伴いますが、コスト削減の効率性を追求し過ぎると、後々もっと高いコストを払うことになりかねないことは、皆様ご認識の通りかと思います。
最後に、当コラムに「リモート監査雑感3」を記載する機会が訪れないことを切に願っている旨、付記致します。
以 上