原価計算雑感

2021年05月06日 更新

板垣太榮三

公認会計士試験には管理会計論が試験科目としてあり、その中で原価計算の問題が出題されます。私の古い昔の受験時代では岡本清先生の大著「原価計算」がバイブル的な受験参考本のひとつだったように思えます。ところで本会計コラムを書くにあたり原価計算に関するどのような本が近年出ているかAmazonで検索してみたところその数の少ないのに驚かされました。極端に言うと数冊の出版です。ある意味原価計算に関する議論が出尽くされ、目新しいトピックスがないのが原因かなとも思います。私たち公認会計士がメーカー等の原価計算を監査する際に拠って立つ基準は「原価計算基準」ですが、なんとその基準が出されたのは1962年で今から60年ほど前になりますが、それも「中間報告」として出された会計基準でありながらその後一度も改訂がありません!
原価計算は大きく、外部への公表目的の会計制度に組み込まれる「制度としての原価計算」と企業が内部的に利用する目的の「管理のための原価計算」の2つがあります。前者は企業が決算書を作り株主、債権者、税務署など様々なステークホルダーに報告するためのもので、後者は企業が製品価格の決定や原価管理・予算管理などの目的に内部的に利用するためのものですが、実は「原価計算基準」はその両者のための基準であり包括した基準といえます。60年前に実にダイナミックな基準が作られたものだと感心させられます。
ところで手前味噌になりますが原価計算こそ職業として考えると公認会計士の独壇場の職業だと思えます。何故なら原価計算はまず制度的な側面を満たす必要があり、それなくして上場企業の場合は会計不正につながりかねず非上場企業でも税務調査に耐えられず迂闊に原価計算を変えることは企業内ではご法度(危険)だと思うからです。さらに原価計算の有用性は管理面でいかんなく発揮されます。原価計算の製品価格計算機能、原価管理(コストダウン)機能、予算管理機能そして経営計画管理機能は古くて新しい機能です。これらの機能の発揮に一役貢献できるのが公認会計士だと思います。私事になりますが私のこれまでの公認会計士としての仕事人生で原価計算の知見は株価算定の知見と並んで私の大きな味方となってくれました。言わば主要なメシの種でした。企業は原価の統制、すなわち経営計画(Plan→Do→Check→Action)の過程で原価計算を如何に使ったらいいかに悩んでいて、公認会計士の専門家としての能力を高く買ってくれます。いうまでもなく企業の損益計算書で原価は売上の次に大きな存在です。その原価をどうやってコントロールしたらいいかに手を持て余している企業が多くあります。さらに株価算定(鑑定)と並んで知的財産の算定(鑑定)も裁判所から依頼されるのは公認会計士ですが、知的財産の算定(鑑定)では原価計算の知見が不可欠なのです。
公認会計士の広報のような会計コラムになってしまいましたが、公認会計士の一人として制度会計の一分野としての原価計算のみではなく多種多様な活用方法が可能な原価計算の知見を身に着けるように切磋琢磨し精進することが今後益々求められると思い至っています。

以 上