2019年12月03日 更新
加藤 りさ
AIは会計士の仕事を奪うかというような、専門誌の特集を目にするようになって、早2、3年は経過したように思える。
当メールマガジン86号の「監査業務はAIに取って代わられるのか」というテーマと類似するが、職業会計人としては昨今の一番の関心事であるため、個人的な所感を記させていただくことにした。会計士の職務である監査業務に限らず、AIは社会の在り方を大きく変えていくことは間違い無く、今がその過渡期なのであろう。そもそも筆者が大学を卒業し、入社した会社で配属された経理局での新人の最初の仕事は、おびただしい枚数の領収書や、請求書のファイリングであった。並行して、数字の練習をさせられた。仕訳は紙の振替伝票に、貸借それぞれの勘定科目のゴム印が押された横に、金額は手書きで書かれていた。先輩の書く均一の傾きの美しい数字の真似を一生懸命にしたものだ。そのような手書きの伝票の起票と入金と支払の管理をするのが経理部で、決裁された伝票を総勘定元帳に入力し、試算表作成、決算書を作成するのが、主計1部、主に予算管理と申告書作成が主計2部、原価計算が主計3部とわかれ、局全体で30人ほどの人員であった。会計ソフトや会計システムが普及した今では考えられないほどたくさんの人がいた。
そんな「昭和」の時代も終わり、消費税3%導入から5%、8%を経た「平成」も過ぎ、「令和」となった今では請求書を複合機でスキャンするとAIを利用し、関連システムと連携し仕訳の自動入力や、銀行支払データまで作成をしてくれるシステムも登場している。
参考までに、R社のHPのシステムの紹介を読むと、請求書をスキャンまたは請求書ファイルをアップロードすることで請求書をOCRデータとして読みとり、CSVファイルとして会計システム・銀行支払システム等に利用するということである。
但し、AIにより作成されたOCRデータに誤りがないかは、アウトソーシングサービスで行うことと、最終的には顧客(データ提供元の依頼人)が、OCRデータと仕訳の確認を行うというものである。
自動仕訳(買掛金・未払金計上、消込入力等)が誤っている場合は、当然のように手入力での修正が可能であることが明記されている。つまり取引の実態を反映した正しいものになっているか否かは、必ず人の眼で確かめる必要があるのである。
やはり「最後は人の眼」ときて少し安心をする。どのような時代になろうとも、どのような便利な道具が出来ても、人はそれを使いこなすべきであって、人は使われる側になってはいけないという思いがこみ上げてしまう。
そう強気で生きたいものだが、電車に乗ると反射的に、スマホを眺め、Siriからの提案【日経・朝刊を読む】をすんなり受け入れることで、毎朝のルーティンを守る日々を過ごしている。
以 上