クラウド会計 ―開かれた身近な会計へ―

2018年12月10日 更新

板垣 太榮三 

かの坂本龍馬が「これより天下のことを知る時は、会計もっとも大事なり」との言葉を残したそうです(日本公認会計士協会東京会ホームページより)。龍馬は日本で初めて「亀山社中」という商社を興した人物で、抜群の商才も併せもっていたのでしょうが、その龍馬の言葉ですので重みがあります。
 時は現代日本、少子高齢化社会で前途多難な折、国などの公共組織や会社などの民間組織は言うに及ばず個人事業主や家計も含めて会計を公共財として広く普及させたいとの思いが公認会計士にはあります。その思いをクラウド会計は後押ししてくれそうに思えます。
クラウド会計のプロバイダーとしてはフリーやマネーフォワードが有名ですが、クラウド会計とは何かとか、そのメリットやデメリットは割愛させていただくとして(正確に詳しく知りたい方は「クラウド会計」で検索してください)、要は今や万人が持っているスマホがあれば、使った領収書や請求書、預金通帳やクレジットカード明細などをもとにネットワーク上の会計ソフトがAIを使って瞬時に会計に取り込んでくれて、決算書まで作ってくれるという優れものです。会計の何が面倒かといえば、請求書や領収書を貼ってそれを一本一本仕訳として入力すること、しかも消費税処理を間違わずに。このことが会計は会計事務所などの専門家にお願いするもの、との意識を生んでいるのではないでしょうか。他人任せにすると自分のところで使ったあるいは稼いだお金の動きや収支が他人事のように遠い存在になってしまいがちになります。そうすると自分は何にいくら使ったのか、何が原因でお金が足りないのか、あるいは赤字が出るのかが判り辛くなります。クラウド会計では、例えば使った領収書をスマホでパチリと写真に撮り、自社のクラウド宛に送信することにより、会計が済むとともに、経費の精算もそれだけで進めることができます。
さらに「オープンブック経営」という経営思想がありますが、ブック(会計)をその組織に携わる者全員が見ることができる(オープンになっている)ようになっていると、組織への関心が高まり、その結果組織の効率性・生産性が高まるといわれています。会計をクラウド環境下に置くことによって、だれもがいつでもクラウド会計にアクセスすることにより自分の所の会計の状況がすぐにわかりますので、容易にオープンブック経営に参加することが可能になります。
起業家や事業家といったレベルの高い方々のみならず、脱サラ組や定年退職した人、主婦やニートの人など多様な人々が自ら小さな仕事を興し活躍する社会、今ではあまり使われなくなった言葉かも知れませんが一億総活躍社会が今後ますます求められ、その方向に進んでいくと思います。そのような社会で人々が簡単に仕事やボランティアを始められるようにするために、クラウド会計が誰もが使える、より身近で開かれた社会インフラにどんどん進化していくことを期待しています。

以 上