訂正報告書

2018年10月10日 更新

金融庁が提供している金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム(EDINET)において「訂正有価証券報告書」を選択し、その件数を調べたところ以下の通りになっていました(2018年10月3日実施)。
2014.4.1~2015.3.31…522件
2015.4.1~2016.3.31…722件
2016.4.1~2017.3.31…744件
2017.4.1~2018.3.31…727件
1社で過去2期分の有価証券報告書を訂正している場合は2件とカウントされています。また、継続開示期間を経過した訂正有価証券報告書はEDINETで検索できませんので、上の件数は実際に提出された当時の件数よりも少なくなっている可能性があります。
上場会社による訂正報告書の提出は、日本取引所グループの適時開示情報閲覧サービスにおいてその事実が公表されますし、特に不正が関係する場合は色々なニュースや、会計関連の情報サイトでも取り上げられることが多いので、その発生が知られるところになると思います。これらを見ていると、以前に比べて訂正に関係する公表が多くなってきたと感じてしまいます。
有価証券報告書の訂正報告書については、金融商品取引法第24条の2第1項で準用するところの第7条第1項において、「記載すべき重要な事項の変更その他公益又は投資者保護のため当該書類の内容を訂正する必要があるものとして内閣府令で定める事情があるとき」に自主的に提出すべきものとされており、企業内容等の開示に関する内閣府令第11条において、「提出する時にはその内容を記載することができなかったものにつき、記載することができる状態になった」という事情と、「記載すべき事項に関し重要な事実が発生した」という事情が定められています。多くの訂正報告書はこれらの法律に基づき提出されていますが、金融商品取引法第9条と第10条には内閣総理大臣(同法194条の7第1項と第6項により金融庁長官又は財務(支)局長に委任)による提出命令の定めもありますので、遅滞なく自主的に提出する必要があると思います。
有価証券報告書における経理の状況の財務諸表等を訂正する場合は、財務諸表等の監査証明に関する内閣府令第1条第15号により監査証明を受けなければならないと定められています。しかし、実際の訂正報告書を見ると監査報告書が付いているケースと付いていないケースがありますので、実務においては訂正内容の重要度に応じた対応が行われていると推定されます。例えば、利益の赤黒が逆転する訂正と、注記の中の字句の訂正とでは、同じ訂正でも明らかに投資家の意思決定において重要度が異なるという感覚を一般的に持てると思います。
訂正報告書に監査報告書をつける場合の監査でも、監査意見はあくまで財務諸表全体に対するものとなりますので、訂正箇所だけ監査すれば済むというものではありません。監査人は、訂正に至った事情を踏まえて、監査契約の締結、監査計画の策定、監査手続の実施などを行う必要があるとされています。また、内部統制監査も実施している場合は、内部統制への影響も考慮しないわけにはいきません。もちろん、訂正前の財務諸表に対する監査手続を活かすことはできますので、同じ作業をやり直すということは避けられます。しかし、例えば財務諸表の利益が少なくなる訂正であれば、監査手続の範囲を広げなければならない可能性もありますので、早めに監査人にご相談することをおすすめ致します。

【参考】
 日本公認会計士協会監査・保証実務委員会研究報告第28号「訂正報告書に含まれる財務諸表等に対する監査上の留意事項について」(2013年7月3日)
 日本公認会計士協会東京会監査委員会研究報告書「訂正報告書の事例分析」(2017年6月19日)(会員限り)

以 上