声に出して読みたい会計専門用語 “in English”

2018年03月06日 更新

内海 真樹
 
私が会計士試験に合格して監査法人に入所し、初めて配属された部署は国際部でした。今となってはフレッシュさのかけらもありませんが、おそらく当時はいわゆる意識高い系の新入社員だったのでしょう。「色々なことができるようになりたい!」という一心で、英語なんて全然できないのに、とりあえず国際部を希望していました。
 あれから何年も歳を重ね、英文財務諸表も大分読めるようになってきましたが、今でもインターネットで意味をちょくちょく調べながら読む毎日が続いています。なかなか地道で大変な作業ですが、思わぬところで英語の奥深さと出会い、時間をかけて詳しく調べてしまうということもあります。

今回の会計コラムでは、私が今まで会計専門用語に関する英語を見てきた中で、思わず声に出して読みたくなるような、ちょっとした奥深い部分をご紹介したいと思います。

(1)貸倒引当金関係
(BS) Allowance for doubtful accounts / Bad debt reserve  貸倒引当金
(PL) Provision (of allowance) for doubtful accounts 貸倒引当金繰入額

 初めて英語でBSとPLを見た際に、まず思ったのが「貸倒引当金って色々な言い方をするのね」ということでした。ある会社では、”Allowance”、ある会社では”Reserve”、これまたある会社では”Provision”が使われており、自分の中の認識としては「その時のフィーリングで使い分ければいいや」といった感覚でいました。
 しかしながら、金融庁が公開している英語での勘定科目リストを見て、ようやくその違いに気づくことができました。主だった違いは、BSかPLかということのようです。
 “Provision”については、”Provide”(供給する)の名詞形ですので、「繰入額」を意味します。したがって、”Provision for~”ですと、PLの勘定科目となるようです。
 一方で、”Allowance”や”Reserve”といった表現はBSの勘定科目として使用されますが、”Allowance”の方が一般的な表現のようです。これは、“Reserve”という表現は、そもそも「反対勘定 “contra account”」として使われ始めたということであり、売掛金の反対勘定(貸倒引当金)としてだけではなく、固定資産の反対勘定(減価償却累計額)という意味でも使われていました。このように広い意味で使われてしまっていたために、英文決算書の読み手が”Reserve”という言葉で誤った解釈をしないよう、”Allowance”を使用するのが一般的となっているようです。

(2) 固定資産の償却関係
(PL) Depreciation (有形固定資産の)減価償却費
(PL) Amortization (無形固定資産の)償却費
(-) Write-down 帳簿価額の切り下げ
 
上記の3つはいずれも英和辞書等で意味を調べると、全て「償却」という意味が出てきます。ですが、同じ償却でも、それぞれ使い方が全く異なっているので注意が必要です。
 “Depreciation”は、有形固定資産の減価償却費を意味します。一方で、”Amortization”はのれんやソフトウェア等の無形固定資産の償却費を意味します。国際間の企業間比較やM&Aの際には、EBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization)という指標がよく用いられますが、このDAがそれぞれに該当します。
 また、”Write-down”は帳簿価額の切り下げを意味し、棚卸資産や有価証券の下落による評価減の計上や、固定資産の減損会計(Impairment Accounting)の適用の際に”write-down”という表現が使用されます。類似の表現で”Write-off”という表現がありますが、これは切り下げではなく、評価がゼロであり、完全に帳簿からオフバランスさせる際に使用されます。

(3) 税金関係
(PL) Income taxes – current 法人税等
(PL) Income taxes – deferred 法人税等調整額
(BS) Deferred tax assets 繰延税金資産
(BS) Deferred tax liabilities 繰延税金負債

 国際部の監査の現場に、国内部のメンバーにヘルプに来てもらうと、ほぼ間違いなく最初に意味を確認されるのが、”Current Tax”と”Deferred Tax”という表現です。直訳すると現在の税金と繰り延べられた税金ですので、後者は繰延税金のことだなとわかると思いますが、前者の方が通常の当期の法人税等を指すということは、すぐにはピンとこない部分だと思います。
 また、BS科目につきましては、それぞれ繰延税金資産は”Deferred Tax Assets”といい、繰延税金負債は”Deferred Tax Liabilities”といいますが、会話の中で出てくる場合には、頭文字をとって、”DTA”ないし”DTL”と略されて話されることが多いです。「くりのべぜいきんしさん」と言うのと、「ディーティーエー」と言うのでは、圧倒的に後者の方が楽なので、国際部チームでは自然と皆、略語を使用していました。

 以上、ちょっとした会計英語の豆知識でした。まだまだ記憶に新しいと思っていた楽天の英語公用語化も、すでに導入されてから8年近くが経つようです。急に明日、自分の環境でも英語が公用語化されてもいいように、コツコツ楽しみながら英語と向き合い続けていきたいと思います。

以  上