相続税の基礎控除の改正

2017年11月02日 更新

                                                                  國原 義章
 
少し以前に話題となった相続税の基礎控除の改正等(平成27年1月以降)について触れてみたいと思います。報道では基礎控除額が下がるので大変という論調でしたので、まずこの点を検証したいと思います。前提条件として母親(被相続人)と子供1人(相続人)という設定で考えて見ます。基礎控除額は次の通りです。
改正前:5,000万円+1,000万円×法定相続人(1人)=6,000万円
改正後:3,000万円+600万円×法定相続人(1人)=3,600万円
(相続財産の評価は時価ではなく相続税法による評価額となります)
改正前には相続税が発生せず、改正後に対象となった人の場合の影響額は次のようになります。条件として他の要素(控除等を含め)は排除します。

相続税による評価額で丁度6,000万円を少し下回る財産(簡便的な計算をするため6,000万円とします)があった場合、従前では相続税が発生しなかったのですが、今回は相続税が発生し、6,000万円-3,600万円=2,400万円で310万円(2,400万円×15%-50万円)の相続税が発生します。

次に小規模宅地の特例の適用を考えて見ます。
小規模宅地の特例は非常に大雑把に説明すると、被相続人が住んでいた土地や事業をしていた土地について、一定の要件を満たす場合には、80%(住居用及び事業用で特定事業用宅地等及び特定同族会社事業用宅地等)又は50%(事業用で上記以外のもの〔賃貸住宅敷地・駐車場等〕)まで評価額を減額できるという特例です。
例えば被相続人が住んでいた土地の時価が37,500万円(議論を簡単にするため土地のみと矮小化して考えてみます)、相続税評価額(路線価の地域で路線価は時価の80%と想定します)が30,000万円、小規模宅地の特例の用件を満たしている場合、相続税の評価額は80%評価減で6,000万円です。(重要な留意点はこの特例が適用できるかどうか条件をしっかり確認しておくことと、申告しなければ適用されないということです。これは相続税の基礎控除の改正と直接の関連はありません。)この場合、上記と同じ310万円の相続税が発生します。

ここで、小規模宅地の特例が適用できなかったとしたらどうなるでしょう。
路線価が30,000万円ですので相続税の課税対象額=30,000万円‐3,600万円=26,400万円で、相続税は9,180万円(26,400万円×45%‐2,700万円)かかることになります。(一部分は相続税の基礎控除の改正の影響を受けています。また、適用条件も変更されています。)

最初の場合は小さくはないものの相続の風景を変えるほどの変更ではないと思われます。後者は相続税の基礎控除の改正よりも小規模宅地の特例が適用できるかどうかの影響のほうがはるかに大きくなります。現実の事象は白か黒かと単純ではなく複数の要素が組み合わされるので正しい知識で正しい判断が求められます。なお、相続が気になる方は財産明細と相続関係の資料を持って税理士に相談することをお勧めします。最後に上記は紙面の都合上、非常に単純化していること、各種想定をしていること、細かなことを記述していないこと、小規模宅地の適用条件はとても複雑であること、また、その他の要素について記述していないこと等から、上記の結果になることを担保するものではありません。この点ご留意の上参考にして頂けたら幸いです。

                                                                       以 上