カスタマー・ロイヤルティ・プログラム-収益認識会計基準案等の公表を受けて

2017年10月11日 更新

伊賀 雄介

皆さんご存知の通り、企業会計基準委員会は、平成29年7月20日に企業会計基準公開草案第61号「収益認識に関する会計基準(案)」(以下「会計基準案」といいます。)及び企業会計基準適用指針公開草案第61号「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」(以下「適用指針案」といい、「会計基準案」とあわせ「本公開草案」といいます。)を公表しました。
公開草案の段階ではありますが、幅広い業種にわたり大きな影響がでることが予想されます。
影響を与える可能性のある論点は多くありますが、今回のコラムでは、私たち消費者にとって非常に身近な存在であるポイント制度(カスタマー・ロイヤルティ・プログラム)について記載したいと思います。

国際財務報告基準(IFRS)導入コンサルティングでも度々論点となる項目ですが、「適用指針案」においては以下のように規定されています。
「顧客との契約において、既存の契約に加えて追加の財又はサービスを取得するオプションを顧客に付与する場合には、そのオプションが、当該契約を締結しなければ顧客が受け取れない重要な権利を顧客に提供するときにのみ、当該オプションから履行義務が生じる。この場合には、将来の財又はサービスが移転する時、あるいは当該オプションが消滅する時に収益を認識する。」(「適用指針案」第48項)

平たい言い方に直せば、販売価格のうちポイント発行に関する部分を、ポイントが使用されるか失効するときまで繰延べるということですね。

さて、このポイント制度について、最近日経に関連記事が掲載されていました。
(以下括弧書きは、2017年9月10日 日本経済新聞 朝刊より抜粋)
「ポイント活用、再び活発」、「企業の引当金、5年ぶり高水準、購買履歴分析、販促に効果」

「企業が顧客へのポイント還元制度を再び活発に使い始めた。主要20社のポイント引当金を集計したところ、今年3月末時点で約4800億円と5年ぶりの高水準となった。」

「野村総合研究所は14年度に約8500億円だったポイント発行額は20年度に1兆円を超えると予測。ネット通販や電力・ガス業界などで増加が見込まれるという。ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査室長は『携帯電話など競争が激しい分野でポイント発行による値下げ競争が起きている』と指摘する。」

企業によるポイント活用の実態が、記事中に記載されている通り「値下げ」であるのであれば、「本公開草案」にしたがって「繰延収益処理」するのが企業活動の実態を反映しそうですね。
一方で、企業によるポイント活用が、ビッグデータ時代のデジタル・マーケティング・データの取得を主目的とする活動である場合はどうなのでしょう。

やはり、会計は難しいですね。
ともあれ、「本公開草案」の公表及び今後の動向が、企業のポイント活用という行動にこの先どのように影響してくるのか(あるいは影響しないのか)楽しみですね。

以 上