役員、従業員等向けの有償新株予約権(有償ストック・オプション)の取扱について

2017年07月11日 更新

石尾 仁
 
前回、清陽メルマガ69号で、トピックスとして実務対応報告公開草案第52号「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い(案)」の公表が記載されておりました。公開草案の段階のため、まだ確定ではありませんが、その主眼を記載いたします。
役員や従業員等向けの有償ストック・オプションは、新株予約権を時価で発行することにより、役員会決議による発行が可能で、株式譲渡時まで、課税関係が発生しないというメリットがあります。さらに、現状におきましては、有償ストック・オプションは、企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」が適用されるか否かが明確でないことから、「払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理」の定めを適用しているケースが多く、費用計上がされない実務が多く採用され、発行企業にとっては業績への影響がないというメリットもありました。
有償ストック・オプションのデメリットは、付与対象個人の支払があることですが、それについても業績達成等の条件を付けることにより公正価値評価を抑えるという手法で、対象者支払のデメリットを少なくすることで、メリット面を生かし、採用する企業が年を追うごとに増えてきておりました。

近年会計上の扱いも議論があり、従来から費用化に向けての検討が進められておりました。

冒頭に記載の通り、企業会計基準委員会(ASBJ)から5月10日に、実務対応報告公開草案第52号「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い(案)」が公表されました。
これにより、従前は費用処理が必要なかった有償ストック・オプションのうち、権利確定条件付き有償新株予約権を付与する場合は、「ストック・オプション等に関する会計基準」を適用されることが明示されました。この適用に伴い、権利確定条件付き有償新株予約権におきましては、権利確定条件を満たす可能性が高くなったことにより、権利不確定による失効の見積数に重要な変動が生じた場合には、権利確定条件付き有償新株予約権数を見直し、見直し後の権利確定条件付き有償新株予約権数に基づく公正な評価額から払込金額を差し引いた金額に基づき、見直し以降の会計期間に費用計上することが必要となります。
なお、適用時期等につきましては、公表日以降に付与されるものを処理の対象とし、公表日前に付与されたものについては、従前の会計処理を継続し、概要等の注記が必要となります。

以 上