平成29年度税制改正の大綱

2017年01月13日 更新

相川 聡志

平成28年12月22日に閣議決定されました「平成29年度税制改正の大綱」について記載します。
http://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2017/20161222taikou.pdf

税制改正内容は広範囲に亘るためこの中でも以下の項目をピックアップして記載します。
<個人所得税>
・配偶者控除の見直し
・NISAの期間延長
・(所得税ではないけど)ビール・発泡酒の酒税統一
<法人税>
・確定申告期限の延長
・タックスヘイブン税制の見直し
<相続税・贈与税>
・免税要件期間が5年から10年へ延長

・配偶者控除の見直し(平成30年分以後の所得税から)
『控除対象配偶者又は老人控除対象配偶者を有する居住者について適用する配偶者控除の額を次のとおりとする。なお、合計所得金額が 1,000 万円を超える居住者については、配偶者控除の適用はできないこととする(所得税の控除、『』は大綱からの引用で以下同じ。)。』
居住者の合計所得金額        控 除 額
             控除対象配偶者 老人控除対象配偶者
900万円以下          38万円      48万円 
900面円超950万円以下     26万円      32万円
950万円超1,000万円以下    13万円      16万円
1,000万円超は配偶者控除なし。
従来、配偶者控除として38万円はどの所得段階においても所得から控除でき、税金を減らす効果がありましたが、上記所得区分に応じて配偶者控除が減り、増税となります。
女性の就労支援という大義名分のもとに見直しが進められていましたが、結果としては夫の配偶者控除を減らして税負担を増やし手取り額を減らすことで、妻が就労しないと家庭内手取りが減るから奥さん働きなさいという仕組になりました。

・NISAの期間延長(平成31年分以後の所得税から)
『非課税口座に累積投資勘定を設けた日から同日の属する年の1月1日以後20年を経過する日までの間』はNISAに係る所得について所得税及び住民税が課税されません。
現状の日本の国家財政支出の半分は社会保障費で、年金支払財源は完全には確保されていない状況です。NISAを拡充することで将来の年金支給に不安がある若い世代に自分で積み立てさせることを国自体が支援しているように思えます。裏返せば、国民のみなさんに支払ってもらっている年金納付額は将来年金給付として返せないかもしれないから、将来の年金は自分で金融商品を積立なさいと言われているような気がします。

・(所得税ではないけど)ビール・発泡酒の酒税統一
平成32年10月1日より段階的に、ビールと発泡酒の酒税が寄せ合いし始め、平成38年10月1日以降、ビールと発泡酒は同一の酒税になります。新ジャンルと呼ばれる発泡酒もビールと同一になります。なお、ホップ及び一定の苦味料を原料としない酒類だけは別区分で残ります。ビールの酒税下げ、発泡酒の酒税上げとなるので、あとは原材料の差だけが価格差になります。平成38年10月1日からなので、ビールが安くなるまでしばらくかかります。

・法人確定申告期限の延長
国税
『法人が、会計監査人を置いている場合で、かつ、定款等の定めにより各事業年度終了の日の翌日から3月以内に決算についての定時総会が招集されない常況にあると認められる場合には、その定めの内容を勘案して4月を超えない範囲内において税務署長が指定する月数の期間の確定申告書の提出期限の延長を認めることとする。』
地方税
『法人が、会計監査人を置いている場合で、かつ、定款等の定めにより各事業年度終了の日から3月以内に決算についての定時総会が招集されない常況にあると認められる場合には、その定めの内容を勘案して各事業年度終了の日から6月を超えない範囲内において都道府県知事が指定する月数の期間の確定申告書の提出期限の延長を認めることとする。』
会社法での株主総会延長議論にあわせる形での改正となりそうです。

・タックスヘイブン税制の見直し(平成30年4月1日以降開始事業年度)
『外国関係会社が特定外国子会社等に該当するかどうかを判定するための租税負担割合基準を廃止する。』
従来の法人税率20%未満というトリガー税率が廃止されます。ただし、適用免除がありまして、『外国関係会社の当該事業年度の所得に対して課される租税の額のその所得の金額に対する割合(以下「租税負担割合」という。)が 20%以上である場合には、会社単位の合算課税の適用を免除する。』となっています。
トリガー税率という足切り基準がなくなった代わりに、毎年度外国子会社の租税負担割合を計算しないといけなくなりました。
『会社単位の合算課税制度における適用除外基準について次の見直しを行った上で同制度の発動基準(以下「経済活動基準」という。)に改め、経済活動基準のうちいずれかを満たさない外国関係会社について、会社単位の合算 課税の対象とする。』
いわゆるペーパーカンパニーか否かの判断基準となる名称が、「適用除外基準」から「経済活動基準」に改まりました。後述しますが、より一層文字通りペーパーカンパニーと判定される会社については別の規定ができました。

『ロ 実体基準及び管理支配基準
保険業法に相当する本店所在地国の法令の規定による免許を受けて保険業を営む一定の外国関係会社(以下「保険委託者」という。)の実体基準及び管理支配基準の判定について、その外国関係会社のその免許の申請等 の際にその保険業に関する業務を委託するものとして申請等をされた者で一定の要件を満たすもの(以下「保険受託者」という。)が実体基準又は管理支配基準を満たしている場合には、その外国関係会社は実体基準又は管理支配基準を満たすものとする。』
地震保険を使って自社で再保険を海外で引き受け、海外の再保険会社に再度引き受けさせるといったキャプティブを利用して国内所得を海外所得に移転する方法が使いやすくなります。

『ホ 経済活動基準を満たすことを明らかにする書類等の提出等がない場合の推定
国税当局の当該職員が内国法人にその外国関係会社が経済活動基準を満たすことを明らかにする書類等の提出等を求めた場合において、期限まで にその提出等がないときは、その外国関係会社は経済活動基準を満たさないものと推定する。』
ここについては大綱の文言だけでは詳細は分りませんが、従来は適用除外の書面は確定申告書に添付が必須で後出しができないものでしたが、改正後は添付しなくても後出しができるようになるのかもしれません。ただし、租税負担割合20%未満の外国関係会社については財務諸表等を確定申告書類に添付しなければなりません。法人が所有する場合と個人が所有する場合とで確定申告添付書類が従来は異なっていたので、改正税法文については検討が必要となります。

『ロ 部分合算課税に係る少額免除基準のうち金額基準を 2,000 万円以下(現 行:1,000 万円以下)に引き上げる。 ハ 部分合算課税の少額免除に係る適用要件について、少額免除基準を満たす旨を記載した書面の確定申告書への添付要件及びその適用があることを明らかにする資料等の保存要件を廃止する。』
いわゆる資産性所得に関する合算課税対象金額が緩和された上に、確定申告書への添付が不要になります。

文字通りのペーパーカンパニーについての要件が規定され、30%以上の租税負担割合がない限り合算課税対象とされます。簡単に書きますと、①その土地にて固定施設を有さずに管理支配もしていない会社、②資産性所得が総資産の30%超の会社、もしくは③ブラックリスト国に所在する会社、についてはぺーパーカンパニーとして合算課税されます。

・相続税・贈与税(平成29年4月1日以降の相続および贈与から)
『国内に住所を有しない者であって日本国籍を有する相続人等に係る相続税の納税義務について、国外財産が相続税の課税対象外とされる要件を、被相続人等及び相続人等が相続開始前 10 年(現行:5年)以内のいずれの時においても国内に住所を有したことがないこととする。』
相続人・被相続人、贈与者・受贈者がともに5年以上日本非居住者であった場合には、国外財産は相続税も贈与税も課税されませんでした。この非居住者の年数が5年から10年に伸びることになります。これにより海外居住することで贈与税や相続税を課税されないようにしようと対策していた人はさらに5年間海外に住むことが必要になります。現時点で5年を経過している人たちは早急に贈与契約書を作って、贈与を完了させる必要があります。なお、国外財産のみですので、国内財産を保有している方は換金処分した上で、国外に送金して国外の金融商品を買うなどして国外財産に転じる必要があります。平成29年つまり2017年の3月31日までに全て完了させるためにはかなり急ぐ必要があります。

以   上