マイナス金利について

2016年05月11日 更新

森 亮太

1月29日の日銀政策決定会合でマイナス金利が決定されました。リーマンショックからゼロ金利政策を導入しており、これ以 上金利を引き下げられないと考えられていましたが、日銀の黒田総裁は物価上昇率 2%を目標に量的・質的緩和政策に続 き、日本初のマイナス金利により、市場にお金を流し、企業の設備投資と賃上げを後押しし、経済の拡大を狙いました。現在 10 年国債利回りは▲0.1%を割っています。 アメリカは去年12月に10年振りの利上げを行い、金融引き締めを行いました。欧州は日本と同様に金融緩和を続けてお り、欧州中央銀行の政策金利はマイナスとなっています。  長期国債の利回りがマイナスで推移すると、企業会計へは退職給付会計や減損会計の割引率等に影響があります。国債 の利回りがマイナスの場合、割引率としてマイナスとなった利回りをそのまま用いるか、ゼロを下限とするか問題となるところであり ます。これに関し企業会計基準委員会は退職給付債務の割引率については、マイナス金利もしくはゼロを下限とした処理のど ちらも容認したようです。また金利スワップの特例処理については、特例処理を容認したようです。 【退職給付債務-議事録要旨】 ・割引率として国債の利回りを用いる場合、マイナスの利回りをそのまま用いる論拠の方が、現行の会計基準の趣旨とより整 合的 ・ゼロを下限とした割引率を用いて決算準備作業をすでに進めている企業がある可能性があり、こうした企業に配慮すべきとの 実務上の要請あり ・平成 28 年 3 月決算においては、マイナスの利回りをそのまま利用する方法とゼロを下限とする方法のいずれの方法を用いて も、現時点では妨げられない 【金利スワップ-議事録要旨】 ・現時点では、実際に借入金の変動金利がマイナスとなっている例は少ないと考えられ、仮にマイナスでも、借入金の支払利 息額(ゼロ)と金利スワップにおける変動金利相当額とを比較した場合、通常、両者の差額は僅少と考えられる ・平成28年3月決算においては、これまで金利スワップの特例処理が適用されていた金利スワップについて、特例処理の適用 を継続することは妨げられない 平成 28 年 3 月期決算において、マイナスではありませんが、大和ハウスが退職給付債務算定における割引率を 1.7%か ら0.8%に変更し、特別損失849億円を計上、LIXILグループは、国内子会社の退職給付債務に関して数理計算上の差 異を即時認識する会計処理を採用しているため、金利低下に伴い営業損失約△100 億円を計上したようです。  個人生活への影響としては、住宅ローンや自動車ローン金利の更なる低下により、不動産の購入が活発になる可能性 があります。特に住宅ローン金利の代表的なものは 4 月時点以下となっています。 ・変動金利-じぶん銀行 0.497%(がん 50%保障団信無料付帯) コ ラ ム  ・当初 10 年固定金利-住信 SBI ネット銀行 0.640%(団信・8 疾病保障無料付帯) ・35 年固定金利-三菱東京 UFJ 銀行 1.22%(団信込) ・借り換え-りそな銀行当初 10 年固定金利 0.55% 去年 4 月と比較してもフラット 35 で 1.54%⇒1.19%と大幅に低下しておりますので、金利面からすれば不動 産購入の追い風といえるかもしれません。

以  上