企業の分類

2016年03月11日 更新

槇田 憲一郎

平成27年12月28日に企業会計基準委員会から企業会計基準適用指針第26号『繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針』(以下、本適用指針とする。)が公表されました。本コラムでは本適用指針に示されている、企業の分類に応じた繰延税金資産の回収可能性に関する取扱いの部分について触れていくことにします。

本適用指針では、監査委員会報告第66号における企業の分類に応じた取扱いの枠組みを基本的に踏襲した上で、当該取扱いの一部について必要な見直しを行っています。監査委員会報告第66号における企業の分類に応じた取扱いを踏襲するにあたって、監査委員会報告第66号において「例示区分」として示されていた事項や監査上の指針として示されていた内容を、会計上の指針として取扱いを明確にすることとしています。

具体的には、分類ごとに要件を設定することとし、要件に基づき企業を『分類1』から『分類5』まで分類した上で、当該分類に応じて回収が見込まれる繰延税金資産の計上額を見積ることとしています。

各分類の要件については、本適用指針の第17項、第19項、第22項、第26項及び第30項に示されていますが、企業の置かれている状況によっては必ずしもそれぞれの要件を満たすとは限りません。その場合には、過去の課税所得又は税務上の欠損金の推移、当期の課税所得又は税務上の欠損金の見込み、将来の一時差異等加減算前課税所得(※)の見込み等を総合的に勘案し、各分類の要件からの乖離度合いが最も小さいと判断されるものに分類することとしています(本適用指針第16項)。なお、本適用指針第16項における当該判断は、各分類の要件からの乖離度合いを定量的に検討することを意図するものではないとしています(本適用指針第65項なお書き)。

この部分がこれまでの監査委員会報告第66号における考え方と異なっている部分であると考えられます。すなわち、これまでは例示区分に直接該当しない場合は、会社の実態に応じそれぞれの例示区分に準じて回収可能性の判断を行ってきたものと考えられますが、本適用指針では過去、当期、将来を総合的に勘案して各分類の要件からの乖離度合いが最も小さいと判断されるものに分類し、分類が決定されれば、本適用指針の第18項、第20項、第21項、第23項、第24項、第25項、第27項、第28項、第29項及び第31項に従って回収可能性の判断を行うとされています。

例えば、これまでは、『例示区分1』に直接該当しない企業が、『例示区分1』に準じてほとんどの繰延税金資産を回収可能性ありとしながらも、一部の繰延税金資産を回収可能性がないと判断していたような場合が考えられました。しかしながら、本適用指針においては、例えば、『分類1』の要件に直接該当する企業、本適用指針第16項によって乖離度合いが最も小さいと判断して『分類1』に該当した企業のいずれにおいても、回収可能性の判断は本適用指針第18項に従って行います。なお、分類の変更を検討しなければならないような状況になった場合も同様に判断するものと考えられます。

このように、企業の分類が『分類1』から『分類5』のいずれに該当するかの判断を本適用指針第16項も踏まえて行うことがまず重要になってくるものと考えられます。本適用指針が監査委員会報告第66号における企業の分類に応じた取扱いの枠組みを基本的に踏襲している以上、これまでの例示区分から分類が大きく変わることはないと思いますが、本適用指針に従って、自分の会社がどの分類に該当するかを判断しておいてはいかがでしょうか。適用開始は平成28年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から(早期適用あり)です。

以 上

(※)「一時差異等加減算前課税所得」とは、将来の事業年度における課税所得の見積額から、当該事業年度において解消することが見込まれる当期末に存在する将来加算(減算)一時差異の額(及び該当する場合は、当該事業年度において控除することが見込まれる当期末に存在する税務上の繰越欠損金の額)を除いた額をいう(本適用指針第3項(9))。