2016年02月05日 更新
平安 宏充
平成28年度税制改正大綱が発表されました。この大綱によれば、建物附属設備と構築物の減価償却方法が、定率法から定額法に変更されます。これについての論点をまとめたいと思います。
適用時期
平成28年4月1日以後取得の建物附属設備と構築物の減価償却方法が、定率法から定額法に変更されます。
既存資産に対する資本的支出
平成28年4月1日より前に取得した建物附属設備と構築物については、定額法、250%定率法又は200%定率法のいずれかによって、減価償却が行われています。今回の税制改正大綱では、これらに対する資本的支出については、今後は定額法に一本化されることとされました。
平成10年度税制改正との違い
上記のように、今回の税制改正大綱では、定率法が採用されている既存資産についても、資本的支出については定額法が強制されることになりますが、平成10年度改正で行われた建物の償却方法の定額法一本化においては,適用日前に定率法で償却していた建物について適用日以後に行った資本的支出の償却方法が定額法に強制されることはありませんでした。
会計方針の変更に対する影響
多くの企業は法人税法の減価償却方法を「正規の減価償却」として採用しているのが実務慣行です。こうした状況を鑑み、「監査・保証実務委員会実務指針第 81 号 減価償却に関する当面の監査上の取扱い」において、平成19年度の税制改正(償却可能限度額及び残存価額を廃止)や、平成23年度の税制改正(250%定率法から200%定率法への変更)に関連した減価償却方法の会計方針の注記の取り扱いが明文化されています。すなわち、既存資産について従来の法人税法上の減価償却方法を採用する一方で、新規取得資産について新たな法人税法上の減価償却方法を採用することになったとしても、「同一種類で同一用途の資産について、類似の減価償却方法を採用するものと認められるため、法令等の改正に伴う変更に準じた正当な理由による会計方針の変更として取り扱う。」とされております。
この点、平成19年、23年時の税制改正では、同じ定額法の枠の中、又は同じ定率法の枠の中での変更であったのに対し、今回の税制改正大綱は、定率法から定額法への変更であるので、これを「類似の減価償却方法」として一律に「法令等の改正に伴う変更に準じた正当な理由による会計方針の変更」として取り扱えるかは議論があるところです。
これに関して、執筆時点(平成28年1月27日)では、日本公認会計士協会等から、特に指針などは出ておりませんが、今後、何らかの指針等が発表されることが予想されます。
以上