消費税増税にかかる軽減税率の導入について

2015年12月08日 更新

公認会計士 中山 直人

 2017年4月に消費税率が10%に増税されます。これを受けて公明党は「酒類を除く飲食料品」について軽減税率の導入を主張していますが、財務省の試算では当該軽減税率の導入による税収の減少は1.3兆円にもなるようです。この穴埋めのために、党税制調査会総会では高額所得者の所得税率の引き上げやたばこ税の引き上げ案等が出されたようですが、どれも決め手に欠けるようで、この先の見通しも暗いようです。

 軽減税率の導入については色々と問題があるように言われています。そんな中、国税庁のHPに「食料品等に対する軽減税率の導入問題」という税務大学校 研究部 髙田教授の寄稿が載っていました。 このような寄稿を載せていることから、国税庁は軽減税率の導入に反対しているのだと思われます。

 この寄稿では、まず、「食料品に対して軽減税率を適用した場合の負担の変化(試算)を見ると、相対的な負担割合を緩和する効果は認められるものの、高所得者層にもより高額の軽減効果が及ぶため、必要となる財源の大きさに比し低所得者層の負担軽減効果はさほど期待できず、効率性の観点からは疑問が多い。」と逆進性の問題があると指摘しています。
 その次に「対象となる食料品の範囲」や「食料品の譲渡の範囲」が非常に曖昧で制度化するのが困難だと述べています。「食料品の譲渡の範囲」とは食料品の販売と飲食サービスの提供の区分が難しいことを述べたものでありますが、それに加え、「外食が一般的に贅沢であるという考え方自体が時代錯誤ではないかとの批判もある」とも述べています。
 何が贅沢で何が生活必需品かなど、個人の判断で変わるものでしょうから国が一律に決めてしまうことがそもそもおかしいのかもしれません。

 また、仕入税額制度の面からも「軽減税率が採用されれば仕入れについて複数の税率が存在するため、適正な仕入控除税額の計算という観点から、ヨーロッパ型のインボイス方式の導入が不可欠になるという意見が多い。他方で、インボイス方式の導入に対しては、従来から事業者の事務負担や免税事業者の取引排除の問題を懸念する指摘がなされてきている。」と述べています。
事務負担の増加は容易に想像できる問題ですが、免税事業者の取引排除の問題はなぜ起こるのでしょうか。
 ここで、日本における「請求書等保存方式」とヨーロッパ等で導入されている「インボイス方式」がどのように違うか皆さん理解しておられるでしょうか。これについては財務省のHPにきちんとした説明がありました。
請求書等保存方式:帳簿の保存に加え、取引の相手方(第三者)が発行した請求書等という客観的な証拠書類の保存を仕入税額控除の要件としているが、請求書等に適用税率・税額を記載することは義務付けられていない。
インボイス方式:課税事業者が発行するインボイスに記載された税額のみを控除することができる方式。
 課税事業者は「インボイス」の発行が義務付けられており、また、自ら発行した「インボイス」の副本の保存が義務付けられている。
 「インボイス」に適用税率・税額の記載が義務付けられている。
 免税事業者は「インボイス」を発行できない。したがって、免税事業者からの仕入れについて仕入税額控除ができない。
 
免税事業者の取引排除の問題とは、③が理由であるということがこれでわかります。これは免税事業者にとって命取りになりかねない重大なリスクとなるでしょう。

このように、軽減税率の導入には課題や問題が山積みのようです。あと1年と少しでとても準備が間に合うとは思えませんが、政治がどのような結論を出すか、静かに見守りたいと思います。

以上