企業会計基準適用指針公開草案第54号 「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」

2015年11月09日 更新

公認会計士 土橋宏章

平成27年5月26日に企業会計基準委員会より企業会計基準適用指針公開草案第54号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」が公表され、平成27年5月26日から7月27日にかけてコメントの募集が行われました。

本公開草案においては現在日本公認会計士協会から公表されている税効果会計に関する会計上の実務指針及び監査上の実務指針の内容を基本的に引き継ぎつつも必要と考えられる部分の見直しを行う形で作成されており、特に監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(平成11年11月9日公表)に代表される繰延税金資産の回収可能性の考え方に関して見直しが行われております。

本公開草案の概要は以下の通りです。

企業の分類に応じた繰延税金資産の回収可能性に関する取扱い(第15項から31項)
実務への影響に配慮し従来の監査委員会報告第66 号の企業を5つに分類し当該分類に応じて繰延税金資産の計上額を見積る枠組みを基本的に踏襲した上で必要な見直しを行っている。

(分類 1)から(分類 5)に係る分類の要件をいずれも満たさない企業の取扱い(第15項及び第16項)
(分類 1)から(分類 5)に係る分類の要件をいずれも満たさない企業は過去の課税所得又は税務上の欠損金の推移、当期の課税所得又は税務上の欠損金の見込み、将来の一時差異等加減算前課税所得の見込み等を総合的に勘案し、各分類の要件からの乖離度合いが最も小さいと判断されるものに分類する。

(分類 2)及び(分類 3)に係る分類の要件(第 19 項及び第 22 項)
監査委員会報告第 66 号では、(分類 2)及び(分類 3)について、「経常的な利益 (損益)」という会計上の利益に基づく要件としていたのに対し、本公開草案では「臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得」に基づく要件に変更している。これは、繰延税金資産の回収可能性の判断においては課税所得の十分性を検討する必要があるため、企業を分類するにあたって重視すべき要件としては課税所得がより適切であるとの考えを理由とする。

(分類 2)に該当する企業におけるスケジューリング不能な将来減算一時差異に関する取扱い(第 21 項)
監査委員会報告第 66 号では、(分類 2)に該当する企業においては、スケジューリング不能な将来減算一時差異について一律に繰延税金資産を計上することができないとする取扱いが示されていたが、当該取扱いは企業の実態を反映しない場合があるとの意見、国際財務報告基準(IFRS) 又は米国会計基準の実務との整合に配慮し(分類 2)に該当する企業においては原則としてスケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産について回収可能性がないものとしつつ、スケジューリング不能な将来減算一時差異のうち、税務上の損金算入時期が個別に特定できないが将来のいずれかの時点で損金算入される可能性が高いと見込まれるものについて、当該将来のいずれかの時点で回収できることを合理的に説明できる場合、当該スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資 産は回収可能性があるものとしている。

(分類 3)に該当する企業における将来の一時差異等加減算前課税所得の合理的な見積可能期間に関する取扱い(第 23 項及び第 24 項)
監査委員会報告第 66 号では、(分類 3)に該当する企業においては、「将来の合理的な見積可能期間(おおむね 5 年)内の課税所得の見積額を限度」として一時差異等のスケジューリングの結果に基づき繰延税金資産を計上している場合には、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとされていた。本公開草案では(分類 3)に該当する企業においては、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が大きく増減している原因、中長期計画、過去における中長期計画の達成状況、過去(3 年)及び当期の課税所得の推移等を勘案して、5 年を超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを合理的に説明できる場合、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとしている。

適用時期等(第 49 項)
 適用時期
平成28年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。ただし、平成 28 年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができる。
 本適用指針の適用に関する取扱い
会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う。
 適用初年度の取扱い
当該年度の期首時点で新たな会計方針を適用した場合の繰延税金資産及び繰延税金負債の額と、前年度末の繰延税金資産及び繰延税金負債の額との差額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減する。 ただし、資産又は負債の評価替えにより生じた評価差額等をその他の包括利益で認識した上で純資産の部のその他の包括利益累計額に計上する場合又は直接純資産の部の評価・換算差額等に計上する場合の差額は適用初年度の期首のその他の包括利益累計額又は評価・換算差額等に加減する。
 会計方針の変更による影響額の注記事項の取扱い
適用初年度においては、適用初年度の期首の繰延税金資産に対する影響額、利益剰余金に対する影響額、及びその他の包括利益累計額又は評価・換算差額等に対する影響額を注記する。
以上