コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コード

2015年07月10日 更新

公認会計士 上田 昌宏

2015年4月10日の会計コラムでコーポレートガバナンス・コードについてご紹介させて頂きました。その後、6月1日からコーポレートガバナンス・コード及び改正後の有価証券上場規程等が適用されることとなったのでご紹介します。

コーポレートガバナンス・コード(2015/6/1)
http://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/tvdivq0000008jdy-att/code.pdf
コーポレート・ガバナンスに関する報告書の記載要領(2015/6/1改訂)
http://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/tvdivq0000008j85-att/tvdivq000000uvc4.pdf
コーポレート・ガバナンスに関する報告書の見方(2015/6/1改訂)
http://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/tvdivq0000008j85-att/201506-01.pdf
(日本証券取引所グループHPより)

 コーポレートガバナンス・コードには、もちろん粉飾決算や企業不祥事を防止するという目的もあります。しかし、企業の持続的発展と中長期的観点からの企業価値最大化を目指すという点が重要であるとコーポレートガバナンス・コード有識者会議の座長は述べています。中長期的な観点で経営を考えるためには投資家(株主)の協力も必要になってきます。1,2年、若しくは四半期といった短期的なリターンを求める投資家を意識した経営では視野が狭くなり安定性に欠けてしまうからです。
 日本企業では株主、投資家との対話がこれまで不足していたのではないかと言われており、企業の持続的な成長という目的達成のため、コーポレートガバナンス・コードでは株主との対話ということが原則の一つとして盛り込まれています。これは企業が株主の声に耳を傾け、その関心や懸念に正当な関心を払うとともに、必要に応じて適切な対応策を講じるというものです。

 もちろん、そのためは投資家サイドの協力も必要であり、一方で金融庁は、投資先企業の持続的成長を促し顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図るため、平成26年2月に「責任ある機関投資家」の諸原則(日本版スチュワードシップ・コード)を策定しています。スチュワードシップ・コードでも、長期的な株式価値の向上のために機関投資家が企業のガバナンスをモニタリングすることの重要性や、投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて企業との対話を重視しています。
 実際に、議決権行使助言大手の米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は2015年度の議決権行使の助言方針で自己資本利益率(ROE)の重視を公表し、過去5年間のROEの平均値が5%を下回る企業について、株主に経営トップの取締役選任議案に反対するよう勧告し、新聞報道によると、2015年6月の日本企業の株主総会でもこの基準を下回る企業には機関投資家から多くの反対票が投じられたようです。

 「責任ある機関投資家」の諸原則(日本版スチュワードシップ・コード)
http://www.fsa.go.jp/news/25/singi/20140227-2/04.pdf
 (金融庁HPより)

 このように、コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードの公表、適用によって企業と株主の関係が大きく変わっていくと言われています。このことは両者の情報の非対称性を軽減するとともに、両者が積極的かつ建設的にコミュニケーションを図り、多くの企業が長期的な観点で経営を行い、企業が長期的に存続・発展し、もって社会利益に貢献するという意味でとても意義のあることではないでしょうか。

以上