2015年05月11日 更新
公認会計士 川崎大介
皆様ご存知のとおり、2016年1月より、「マイナンバー」制度の運用が開始されます。それに先立ち、2015年10月以降、住民票記載の住所宛てに、市町村から「マイナンバー」が通知されます。そこで、今回は、「マイナンバー」制度の概要について確認してみたいと思います。
「マイナンバー」制度とは?
「マイナンバー」制度とは、国民一人ひとりに12桁の番号を割り当て、氏名や住所、生年月日、所得、税金、年金などの個人情報を、その番号に紐づけることにより一元管理する共通番号制度のことです。
「マイナンバー」制度のメリットは?
この「マイナンバー」制度には、どのようなメリットがあるのでしょうか?
政府広報によると、以下の3つのメリットがあるとのことです。
① 行政の効率化=行政機関や地方公共団体などで、事務作業に要している時間や労力が大幅に削減されます。
② 国民の利便性の向上=添付書類の削減など、行政手続が簡素化され、国民の負担が軽減されます。 また、行政機関が持っている自分の情報を確認したり、行政機関から様々なサービスのお知らせを受け取ることができます。
③ 公平・公正な社会の実現=所得や他の行政サービスの受給状況を把握しやすくなるため、負担を不当に免れることや給付を不正に受けることを防止するとともに、本当に困っている方にきめ細かな支援を行うことができます。
なるほど、素晴らしいメリットが得られるようですね。
「マイナンバー」制度のデメリットは?
では、逆に、「マイナンバー」制度に、デメリットはないのでしょうか?
政府広報によると・・・、特にデメリットについての説明はないようです。まぁ、当然でしょうか。ただし、事業者向けに、以下のアナウンスを行っています。
① 事前の準備として、マイナンバーを適正に扱うための社内規程づくり、マイナンバーに対応したシステムの開発や改修、特定個人情報の安全管理措置の検討、社内研修・教育の実施等が求められています。
② マイナンバー取扱い上の注意点として、マイナンバーの利用範囲は、法律に規定された社会保障、税及び災害対策に関する事務に限定されており、その範囲外でマイナンバーの提供を求めたり、収集すると法律違反となります。
③ 安全管理措置の義務化=業務の外部委託に際しマイナンバーの提供を伴う場合には、委託先・再委託先への監督が必要となることや、法律に規定された事務を処理する必要がなくなった場合で、所定の保存期間を経過した場合には、マイナンバーを速やかに廃棄又は削除する必要があること等々の義務が課せられることになります。
上記に適切に対応するには、事業者側に相当な労力とコスト負担が強いられることになり、デメリットと言えなくもありません。
「マイナンバー」制度と監査業務について
上記で確認したとおり、各事業者においては、従業員等のマイナンバーを適切に管理・保管する必要があり、当然、他へ漏えいすることは許されませんが、公認会計士又は監査法人(以下「監査人」)による会計監査を受けるに際して、監査人へマイナンバーを含む特定個人情報を提供することは、問題ないのでしょうか?
これについては、特定個人情報保護委員会から公表されたガイドラインに関するQ&Aにおいて、以下のとおり示されています。
Q5-5 公認会計士又は監査法人が、監査手続を実施するに当たって、監査を受ける事業者から特定個人情報の提供を受けることは、提供制限に違反しますか。
A5-5 会社法第436条第2項第1号等に基づき、会計監査人として法定監査を行う場合には、法令等の規定に基づき特定個人情報を取り扱うことが可能と解されます。一方、金融商品取引法第193条の2に基づく法定監査等及び任意の監査の場合には、個人番号関係事務の一部の委託を受けた者として番号法第19条第5号により、特定個人情報の提供を受けることが可能と解されます。
したがって、「マイナンバー」制度の導入により、監査人への特定個人情報の提供が制限されるということにはならないようです。
引き続き、クライアントの皆様方には、監査業務へのご理解とご協力をお願いしつつ、いち監査人としては、安易に個人情報の提供を求めることのないように、今まで以上に慎重に業務に当たる必要がありそうだと、思った次第です。
以上