2015年04月10日 更新
公認会計士 森亮太
金融庁は平成27年3月5日に「コーポレートガバナンス・コード原案」を公表しました。
これはコーポレートガバナンスにおける主要な原則を示して、「コンプライ・オア・エクスプレイン」(原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明するか)を求めるものです。上場会社は、定時株主総会後、遅滞なく原則への対応を示したコーポレートガバナンス報告書を提出する必要があり、平成27年6月1日からの適用を予定しています。原案の構成は、抽象的・一般的な原則を示した「基本原則」、細目を示した「原則」「補充原則」となっており、基本原則は以下の5項目です。
1.株主の権利・平等性の確保
2.株主以外のステークホルダーとの適切な協働
3.適切な情報開示と透明性の確保
4.取締役会等の責務
5.株主との対話
具体的な数値を挙げているのは「独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきである」と「監査役には、財務・会計に関する適切な知見を有している者が1名以上選任されるべきである」の2点です。特に社外取締役については、会社法との相違があります。会社法では社外取締役を1人設置していれば、「社外取締役を置くことが相当でない理由」を株主総会において説明する必要はありません。一方、1人のみの設置では原則を遵守していることにはならず、複数選任しない理由を説明する必要があるのです。但し、この複数選任は「原則」であり、遵守しない場合に説明が必要なのは東証1部・2部上場会社となります(「基本原則」「原則」「補充原則」の全てにおいてコンプライ・オア・エクスプレインが必要)。マザーズ・ジャスダック上場会社は複数選任しなくても説明は必要ありません(「基本原則」を遵守しない場合の説明だけ求められる)。
最近の日経新聞にも12月期決算の東証1部・2部上場会社203社への調査の結果、7割の会社で社外取締役導入と掲載されていました。話題の大塚家具については、新たに社外取締役が4人選任され、取締役10人中6人が社外となり、略歴や独立性を見ても相当なガバナンスが効くのではとの印象を受けます。
現在も東証にコーポレートガバナンス報告書を提出し、大株主の状況や役員の変更の都度、情報更新していることと思われます。コード原案は情報開示や体制整備等要求する内容が多岐に渡りますし、実施しない場合の説明義務があります。その説明内容も「ひな型」的な表現により表層的なものとならないよう求めています。また、平成27年6月以後最初に開催する株主総会については、遅くともその6ヶ月後までに提出しなければなりません。3月期決算会社については本年12月までの提出が求められますので、早めにコード原案に目を通し、対応することが望まれます。