領収書等の電子保存

2015年01月09日 更新

公認会計士 平安 宏充

平成26年11月5日付の日本経済新聞(朝刊)に、以下のような記事が記載されました。 「政府は税務調査の証拠となる領収書や契約書の原本を原則7年間保管するよう企業に義務付けた規制を2015年にも緩める方針だ。3万円以上の場合に紙のまま保管するよう求めていたが、スキャナで読み取って画像データを保存すれば原本を捨てられるようにする。・・・」 仮にこれが実現すれば、企業にとってはコスト的、時間的等、様々なメリットが生じると考えられます。この点、現行の帳票に関する電子保存と今後の方向性について考えたいと思います。

 

現行の電子帳簿保存法

平成17年に電子帳簿保存法が改正され、原本が紙の国税関係書類については、一定の要件の下でスキャナを使用して作成した電子データにより保存することができるようになりました。 また、国税関係帳簿書類のうち、帳簿、決算関係書類、契約書及び領収書について、特に重要な文書であるため引き続き紙により保存が求められているが、それ以外のすべての書類については一定の要件の下、紙の保存に代えてスキャナにて保存することができるようになっています。ここでいう、「すべての書類」は、見積書、納品書、請求書、検収書などが該当することになります。 さらに、契約書や領収書であっても、記載された金額が3万円未満の少額なものについては、スキャナ保存が認められています。 ただし、国税関係書類をスキャナ保存しようとする場合には、スキャナ保存を行う日の3か月前の日までに所轄税務署長に対して申請書を提出し、承認を受けることが必要となるため、注意が必要です。

(国税庁HP パンフレット・手引き「電子帳簿保存方法が改正されました」から抜粋)

 

今後の方向性

 

現行では3万円以上の領収書については、紙ベースによる保存が求められています。企業の側からすると3万円未満の領収書と区別して管理することは非常に煩雑であり、結局はすべてを紙で保管することが多いのが現状です。日本経済新聞によると、「経団連の試算では国内企業が領収書や契約書などの税務書類を保管するコストは合計で年間約3千億円にのぼる。これらの保管コストをペーパーレス化でゼロにできれば、企業にとっては法人税の実効税率を約0.6%下げるのと同等のコスト削減効果を見込める。」とのことであります。

従って、今後の方向としては、領収書のすべてを電子保存するような社内体制が整えられるようになるのではないかと考えています。

 

内部統制監査との関係

ご存じの通り、上場企業や会社法上の大会社などでは、監査法人等の会計監査の一環で、内部統制監査が行われています。その中では、「領収書上の経理部の承認印を確認する」ことや、「領収書に残っている担当者のチェックの証跡を確認する」などという手続きが行われたりしていました。領収書が電子保存されることになると、このような内部統制の評価手続きに、少なからず影響がでるのではないかと考えられます。また、紙よりも電子データの方が、改ざんが比較的容易とも考えられます。

よって、事前に担当の監査法人等と協議した上で、領収書等の電子保存体制の構築を行うことをお勧めします。