雇用促進税制について

2014年12月10日 更新

公認会計士 永井圭介

企業の成長を後押しする税制として、様々なものがありますが、その一つに挙げられるのが「雇用促進税制」。要件を満たすことにより、雇用者一人の増加につき40万円の税額控除を受けることができるものです(当期の法人税額の10%(中小企業は20%)が限度)。
「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策」(平成22年9月10日閣議決定)を受けて、雇用を促進する観点から企業の税負担を軽減する措置として創設されたものです。当時の成長戦略の一つとして位置づけられておりましたが、最近でも多くの企業によって利用されています。
もともと平成23年4月1日から平成26年3月31日までの期間内に開始する事業年度における制度でしたが、延長され、平成28年3月31日までに開始する事業年度となりました。

 

1.適用要件について

以下、法人を前提に当税制の適用要件を解説します。

① 青色申告書を提出する法人であること

税務上の優遇措置を受けるためのお決まりの要件です。

② 適用年度とその前事業年度に、事業主都合による離職者がいないこと

これは雇用保険被保険者資格喪失届の喪失原因において、「事業主都合による離職」に該当する退職がないということです。
つまり従業員を解雇したなどという事実があれば適用を受けることはできません。
解雇だけでなく、ハローワークのホームページによれば、下記についても「事業主都合による離職」と判断される可能性があります。
・労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した場合
・事業主が労働者の職種転換等に際して、当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行っていないため離職した場合
・上司、 同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した場合及び事業主が職場におけるセクシュアルハラスメントの事実を把握していながら、雇用管理上の措置を講じなかったことにより離職した場合
・事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した場合
・ 会社の業務が法令に違反したため離職した場合

③ 適用年度に雇用者(雇用保険一般被保険者)の数を5人以上(資本金1億円以下の法人などの中小企業については2人以上)、かつ10%以上増加させていること

この要件が一番のネックとなる場合が多いようです。従業員が数千人規模の会社であればなかなか大変な要件ですが、従業員100人以下の会社であれば、それほど高いハードルではないのでは、と考えられます。

④ 適用年度における給与等の支給額が、比較給与等支給額以上であること

比較給与等支給額=前事業年度の給与等の支給額+(前事業年度の給与等の支給額×雇用増加割合×30%)
つまり、雇用数を増加させても、増加した従業員に対する給与が低水準であれば適用できませんよ、ということです。一般的な正社員を採用するような場合は、この要件は満たされる場合が多いのではないでしょうか。

⑤ 風俗営業等を営む会社ではないこと

これにはキャバレー、ナイトクラブ、ダンスホール、麻雀店、パチンコ店なども含まれます。

 

2.適用のための手続について

①雇用促進計画の作成・提出

適用年度開始後2か月以内に、雇用促進計画を作成し、ハローワークに提出することが必要です。
つまり、事前にきちんと計画を立てなければ適用できませんよ、ということです。これが忘れやすく気を付けなければなりません。今年度従業員が大幅に増えそうだ、という場合はとりあえず提出しておくということがよいかと考えられます。
なお、ハローワークでは雇用促進計画に沿った新規採用を後押ししてくれる制度もあります。

②雇用促進計画の達成状況の確認

適用年度終了後2か月以内にハローワークで雇用促進計画の達成状況の確認を求める必要があります。たとえ計画が未達となっても、それ自体で適用ができなくなるわけではありません。

③税務署へ申告

確認を受けた雇用促進計画の写しを確定申告書に添付します。
なお、雇用促進計画の達成状況の確認には2週間から1か月程度かかりますので、事業年度終了後に速やかに確認を求めることが必要です。

なお、「雇用促進税制」は、「所得拡大促進税制」との選択となりますので、その点はご留意下さい。どちらの税制が有利か事前に判断する必要があります。

以上