IFRS導入に関する最近の状況

2014年11月10日 更新

 

 

公認会計士 中山 直人

 

IFRS? 最近は関連するニュースもあまり目にしなくなり、「そういえばそんな騒ぎがあったっけ」と記憶の彼方になっている方が多いのではないでしょうか。実は当年度が強制導入の予定年度だったのです。

 

民主党が連立与党を組んでいた2011年6月、当時の金融担当大臣が「導入は最低でも2017年3月期まで延期する」と発言したことを発端に、2012年中に導入時期を決定するとしていた政府もその時期について何ら発表することもなく、その流れの中で「IFRS導入はなくなったんだ!」とばかりに取組をやめてしまった企業が多数あったようでした。

その後自民党政権に戻り、円安・株高がすすんだことで経済界にとっては環境が改善されたといえる状況になったのですが、歓迎できることばかりではないようです。実は「IFRS導入」の動きが再燃しているのです。

 

最近の動きを見てみましょう。2013年3月には企業会計審議会においてIFRSにかかる議論を再開しています。当審議会においてIFRS導入の対策としてエンドースメントアプローチによる「J-IFRS」なるものを作成することが決定しました。つまり、日本として受け入れ難いIFRSの基準は除き日本基準も一部に残すといった「IFRS+日本基準」という新たな会計基準を作ることを決定したのです。

 

この結果、2014年7月に「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)」の公開草案が企業会計基準委員会から出されました。

 

(まだ公開草案の段階ですが、)修正国際基準の公表により、従来から認められていた「日本基準」、「米国基準」、「IFRS」とあわせて日本の企業は4種類の会計基準から自社が採用する基準を選択するようになります。これは、「選択肢が増えてうれしい!」などというレベルの話ではなく、「基準が混在しすぎていて決算書の作成者側も利用者側も逆に不利益を被る」という状態ではないでしょうか。

 

ちなみにこの修正国際基準、英語での略称は「JMIS」といいます。どこにも「IFRS」の文字が入っていないことにお気付きでしょうか。これは「修正国際基準はIFRSと別物であり、あたかもIFRSであるとの誤解を与えるような名称を名乗ることは許さない」というIASBの意向があったために「J-IFRS」などの名称がつけられなかったからと聞いています。

 

このようなIFRSと認められない新基準を好んで適用する企業は現れるのでしょうか?実際、最近のアンケート結果では「修正国際基準の採用予定はない」、「どうせならIFRSを採用する」という声が多いようです。

 

こういった状況の中で実際にIFRSを適用または適用予定としている企業は幾つぐらいあるかというと、2014年7月現在で適用済み:27社、適用予定:16社(東証の公表値)となっています。

 

公になっている情報ではIFRSの適用企業が爆発的に増えることはまだまだなさそうですが、未公表ながら2017年3月期や2018年3月期でのIFRS適用を目指して社内の取組を再開した企業もあるようです。

 

皆様も一度、記憶の底から「IFRS導入は廃止ではなく延期」であったという事実を思い出し、現状についての情報を整理してみてはいかがですか。

 

以上