2014年09月15日 更新
公認会計士 田中 仁
国税庁は毎年6月、異議申立て等の納税者救済制度の概要等を公表しています。平成25年度の状況は次の通りでした。
(詳しくは国税庁ホームページ https://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/h25.htm 参照)
<平成24年度>
異議申立て | 審査請求 | 訴訟 | 合計 | |
---|---|---|---|---|
総件数 | 3,286 | 3,618 | 383 | 7,287 |
救済件数 | 325 | 451 | 24 | 800 |
救済率 | 9.9% | 12.5% | 6.3% | 11.0% |
<平成25年度>
異議申立て | 審査請求 | 訴訟 | 合計 | |
---|---|---|---|---|
総件数 | 2,534 | 3,073 | 328 | 5,935 |
救済件数 | 253 | 236 | 24 | 513 |
救済率 | 10.0% | 7.7% | 7.3% | 8.6% |
異議申立ての状況
異議申立ては、税務署長等の処分(更正・決定等)に対し不服がある場合にその取り消し等を求める手続きです。
平成24年度と比較し、平成25年度は認容割合(救済率)に大きな変動はありませんでしたが、申立て件数が752件減少(昨対比22.9%減)しました。
審査請求の状況
審査請求は、異議申立てを経た処分に対しなお不服がある場合に国税不服審判所長に対しその処分の取り消し等を求める手続きです。
平成24年度と比較し、平成25年度は認容割合(救済率)が12.5%から7.7%に下落するとともに請求件数も545件減少(昨対比15.1%減)しました。
訴訟の状況
訴訟は、異議申立てや審査請求という行政上の救済制度を経てもなお不服がある場合の司法上の救済制度です。
平成24年度と比較し、平成25年度は国の敗訴割合(救済率)が6.3%から7.3%に上昇しましたが請求件数は55件減少(昨対比14.4%減)しました。
不服を何らかの形で主張した納税者が減少しているようです。原因はわかりませんが、課税業務の執行につき納税者の理解が得られるようになってきた結果であるとすれば好ましい限りです。しかし、納税者の救済率の減少傾向を見るに、「不服を言っても結局勝てない。」ということで申立て自体が減ってしまっているのだとすれば、残念なことです。
平成15年、納税者勝訴の判決(ストックオプション訴訟など)があったこと等も影響しているとは思いますが、平成18年度には国の敗訴割合(納税者の勝訴割合)は17.9%まで上がりました。それから比較しますと現在の敗訴割合はだいぶ低くなっています。
今年の6月行政不服審査法が改正されました。これに合わせ、異議申立てを経ず直接審査請求可能となったり、審査請求における証拠物件の謄写が認められるなど、納税者の権利をより尊重する形で国税不服申立制度も見直されました(適用は2年内の政令で定める日)。納税者側にフォローの風が吹いているようにも感じます。
何らかの形で救済を受けられた納税者の割合が8.6%という結果、皆さんはどのように受け止められましたでしょうか。税務当局との間で頻繁に起きる主張の食い違い。
「それでも、10件に1件くらいは納税者の意見が認められている。」
我が国の納税制度のより一層の健全化のために筆者は頑張ってみたくなりました。