断捨離とモノの価値評価

2014年07月14日 更新

 

公認会計士 大和田 寛行

 

断捨離という言葉は皆さんご存知かと思います。Wikipediaによれば「不要なモノなどの数を減らし、生活や人生に調和をもたらそうとする生活術や処世術のこと」だそうです。

さて、この断捨離。我が家でも時々行われるのですが、私はモノを捨てるのが苦手な性分で、断捨離には及び腰です。スーツなど自分で選んで買ったモノについては特にその傾向があり、これはもう不要だ、という判断がなかなか下せないのです。「最近着てないけど痩せたらまた着られるかもしれないな」といった感じで一向に進みません。

一方、家内は「使わなくなったモノは原則捨てる」という方針のもと、強力に断捨離を進めます。判断に迷いがありません。自分のモノは早々に片付けて、私に決断を迫ります。「最近着ていないこのスーツ、どうせもう着られないんだから捨てなさい」と。

私と家内、いったいどちらが正しいのでしょうか?もちろん、モノの価値評価には様々な要素が入りますし、一概にどちらが正しいと言い切れるものではないと思います。

では、会計的な見地からはどうでしょうか?当たり前の話ですが、スーツは着てこそ効用が発揮されるものです。したがって、着られなくなったらその価値の大半は失われると考えられます。

このケースでは、私はいつかそのスーツを着るつもりでいますので、購入時の価値はそれほど減少していないと考え、「取得原価-減価償却費」くらいの価値はあるとみています。これに対して、家内は着るつもりで買ったスーツがもう着られなくなったのだから、現時点の価値は購入時のそれを大幅に下回っていると考えています。つまり、このスーツの評価は「再び着られる可能性が客観的にどの程度あるのか」にかかっていると言えます。取得原価での評価を主張する私は、減量してスーツを着られる可能性が高いことを証明しなければなりません。しかし、その実現可能性は極めて不透明であるため、残念ながらこの場合は減損処理が妥当と言えるでしょう。普段、固定資産や投資等の減損を厳しく検討する監査人である私が、我が家では家内にスーツの減損処理と除却を迫られている、という話でした。

衣替えを終えてしばらく経ちますが、未だクローゼットの奥につりさげられた古い冬物スーツ。次回こそは断捨離しようと思います。