2014年06月09日 更新
公認会計士 上田 昌宏
昨今のICT技術には目を見張るものがあります。我々が学生の頃には存在していなかった、存在していてもほとんど普及していなかったインターネットがこれだけ世界中に広がり、今ではこれを利用せずに生活やビジネスを行なうことが想像できないほどです。1960年代に開発されたインターネットの概念・技術が、通信技術の進歩と相まってここ10年ほどで急速に世界に広がり活用されています。1960年代当初、ここまでインターネットが普及することを予測していた人はほぼ皆無ではないでしょうか。
我々は、1760年代から始まったとされる農業器具の機械化の技術が、約110年の時を経た1870年代に、当初は想定もしていなかった自動車という形に進化していき、その後それが世界中に広がるということを経験していますが、その広がり方のスピードははるかに速くなっています。
ICT技術・インフラの発展は、会計システムにも大きく影響を与えています。クレジットカードや電子マネーの普及によって、これらの情報をシステムが自動で読み込み、会計処理まで自動で行なうシステムが開発されています。これによって、これまでのように経費精算の振替伝票の作成の際に、日付や金額や資金使途を紙もしくはエクセル等で作成することなく、社員への精算や会計処理ができるような会計システムが普及しつつあります。現在のところまだ必ずしも精度は高くなく、実務に耐えられるものではないのが現状ですが、これまでの技術進歩の過程をみると、経費精算をひとつ例にとってみても、経費を使った瞬間にその事実がデータ化され、これが自動的に精算や会計起票が為されるシステムが早晩普及していくことになるのではないかと思われます。
さらに、現在、人工知能について感心が高まっています。人間の声を聞き分けたり、ネット上の画像をコンピュータが自分で認識して画像を作成したり、コンピュータに大学を受験させるなど、多方面でそれぞれの研究が進んでいます。現段階では、特に自然言語の理解・処理に関しての精度は高くないものの、たとえば将棋に関しては、プロ棋士との団体戦でここ数年、コンピュータとの対戦で負け越しているなど、分野によっては人間を上回る成果を挙げています。
日本語の読解・解釈・理解など、自然言語の分野での人工知能の精度が高まってきて、コンピュータが会計基準や税法を理解できるようになると、会計システムもさらに自動化が加速すると推測されます。会社がある取引を行なった場合、その取引がどのようなもので、どのような会計処理を行なうべきか、コンピュータが瞬時に自動的にその時の会計基準や税法、その他のルールに従って正しい会計・税務処理を行ない、財務諸表や税務申告書を自動で作成することができる、そんな時代が早晩来るのかも知れません。
データをのみ込めばのみ込むほど進化する人工知能は、いずれは人間の知性を超えるのではないかという予測も出始めています。もちろん、人工知能の開発に関しては倫理的な問題も多分にありますが、一方で、利便性という観点での魅力は十分にあるので、当面は開発が進み、それが会計システムにも利用されていくことが予想されます。そうなれば、取引が発生した瞬間にそれを会計数値に変換することができ、さらに迅速に信頼性できる財務諸表ができるような会計システムが開発されてくるかもしれません。