「監査報告書」に過去最大の改革か!?

2014年04月07日 更新

公認会計士 川崎大介

4月に入り監査法人の業務の繁忙期に突入し、日々の業務に忙殺される前に、今後の中長期的な展望に係わる情報収集をしてみた。その中で、今後の会計監査を取り巻く環境に大きな変化をもたらし得るトピックが目に留まった。

2013年8月、米国のPCAOB(公開会社会計監視委員会、米国での監査法人の監督機関に相当)は、「監査報告書」の改革案を可決した。具体的には、「無限定適正意見の場合の監査報告書」及び「監査した財務諸表及び監査報告書が含まれる開示書類におけるその他の記載内容に関連する監査人の責任」の公開草案(以下、改革案)である。どのような改革案であろうか。
現在、米国でも日本でも、1年間の会計監査の結果、最終的に有価証券報告書等(米国では10-Kや20-F)に付される「監査報告書」には、一定の雛形に基づいて、適正意見や意見不表明などの最終的な結論のみが記載されている。
これが今回の改革案に基づくと様変わりしそうだ。誤解を恐れずに簡単に要約すると、「監査報告書」には、最終的な結論のみならず、会計上の重要な問題が把握された場合、それに対する判断の根拠や実施した監査手続きについても記載せよ、ということのようだ。
PCAOBは、米国内外に広く求めたパブリックコメントも踏まえ、詳細を詰めていくものと思われるが、当該改革案が適用された場合、会計監査業務に大きな影響が生じることは想像に難くない。現状、監査の過程で重要な問題事項等が把握され、監査上特別な検討を行ったとしても、最終的な結論が無限定適正意見であれば、その過程が開示されることはないが、改革案によれば、最終的に無限定適正意見であっても個別の重要な問題については情報を開示しなければならなくなる。非監査会社が開示していない情報について、監査人が独自に情報開示の役割を担うことは、現在の監査モデルでは想定されていないのだから、確かに ”改革” である。

当該改革案の背景にあるのは、やはり、株主・投資家からのプレッシャーだ。株主・投資家は、監査人に対し、重要な問題事項等をいち早く開示し、より有用性の高い役に立つ「監査報告書」を作成することを求めている。確かに、現状の画一的な「監査報告書」では、株主・投資家に対し有用な情報を提供することには限界がある。近い将来、どのような内容の「監査報告書」を作成するかによって、監査人の評価が問われる時代がやってくるのかもしれない。

最後に、PCAOBの当該改革案に対する日本公認会計士協会のパブリックコメントを、一部抜粋になってしまうが、ご紹介したい。「監査報告書における監査上の重要な事項のコミュニケーションに実施した監査手続(監査上の重要な事項の結果を含む)を含めることは有益でないと考える。理由は以下のとおりである。・・・」として、続きに尤もな理由がいくつか挙げられているが、長くなるのでここでは割愛させて頂く。要は、日本公認会計士協会は、当該改革案に対しては慎重な姿勢をとっているようで、個人的には正直ほっとした、というのが本音になる。

なお、ウォールストリート・ジャーナルによると、早ければ2017年にも新しい基準が適用される見込みとのことで、そう遠い将来の話ではなさそうだ。米国で採用された制度は、遅かれ早かれ日本にも上陸することは過去を振り返れば明らかで、この改革案の行く末を注視していく必要がありそうだ。